6mmの小さなダイナミックドライバーを、たった1基だけ。
AFULといえば、PerformerシリーズやシングルBAのMagicOne、14ドライバー構成のDAWN-Xなど、ドライバーの組み合わせで攻めてくるブランドという印象が強いですよね。今回のMiracleOneはそこから一転、ドライバーは1つだけ。その代わりに前後のチャンバーや音道、回路まで含めて、イヤホン全体を1つの音響システムとして組み上げた…というのが売りになっています。
透明なシェル越しに中の構造がまる見えなのも、眺めていて楽しいところです!
ということで、『AFUL MiracleOne』をレビューしていきます!

HiFiGo様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
AFUL MiracleOneは、6mmの広帯域ダイナミックドライバーを1基だけ搭載したIEMです。振動板にはLSR(液状シリコーンゴム)を採用しています。
設計の中心にあるのが、AFULが「SEM(Sound・Electricity・Math)」と呼ぶ手法です。ドライバー単体を追い込むのではなく、ドライバーの特性、チャンバーの容積、音道の形、回路の定数を測定と計算で合わせ込み、イヤホン全体を1つの系として調整する考え方とされています。
ドライバーの前後には、それぞれ専用の音響構造が設けられています。前側は段差のある音道と共鳴用の微細構造で高域の伸びとピークを整え、後側はチャンバーと共鳴管で低域からサブベースの量感を調整する構成です。外箱には、3Dプリントによる音導管構造や微細共鳴音道の技術名も記載されています。
シェルは一体成形の透明レジン製で、内部の音道や基板を外から確認できます。ケーブルは0.78mm 2Pin接続の4芯6N銀メッキ単結晶銅線で、プラグは3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスから購入時に選ぶ形です。付属イヤーピースは音の傾向が異なる3種類が用意されています。
| 構成 | 1DD 6mm LSR振動板×1 |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 5Hz〜35kHz |
| インピーダンス | 18.5Ω |
| 感度 | 101dB @1kHz |
| 発売日 | 2026年10月 |
| 価格 | 199.99ドル Amazon.co.jp 33,980円(税込) |
パッケージ
パッケージの表面には「MiracleOne」本体が大きく描かれていて、その後ろには渦巻きのようなものが描かれています。本作の特徴は竜巻のような渦巻きなので、ここでもしっかり特徴を表していますね…!

開けるとこんな感じ。左にケース、右に本体がスポンジに埋め込まれています。本当は蓋を開けると、写真の後ろ側に映り込んでいる半透明の線画が入っています。開けた瞬間に「中身の仕組み」はこうだよ!と教えてくれる構造です。

内容物
付属品一式です。本体、ケーブル、イヤーピース3種、円形の収納ケース、取扱説明書という基本的な構成です

- イヤホン本体 1ペア
- ケーブル
- セミハードケース
- イヤーピース 3種類
- 説明書等
イヤホン本体
透明のハウジングの中にネットワーク回路のようなものが入っているのが見えますね。内部が透けて見える構造で、少し珍しいイヤホンだなと思います。

金属製のノズルの先端はかっこいいエンブレムのようなデザインになっています。…それよりハウジングを見てください。螺旋状にぐるぐると巻かれた音導管が透けて見えるではありませんか…!

この構造が名前の由来になっているようで、音質的に何やら凄い効果があるということらしいです。
ケーブル
付属ケーブルは柔らかく取り回しが良くい4芯ケーブル。使い勝手が良いケーブルが付属するのが有難い…!

イヤーピース
イヤーピースは3種類×S・M・Lの計9ペア。上段が半透明(Spatial)、中段が白い軸(Clarity)、下段がグレーの傘に青い軸(Vocal)のタイプで、それぞれ狙った音の方向が違うものとして案内されています。

ケース
ケースは円形のハードケース。内側は布張りになっていてイヤホンが直接当たらないように配慮されていました。

装着イメージ
6mmドライバーのおかげでシェルがかなり小さく、耳のくぼみにすっぽり収まります。しかもノズルも長めでしっかりと耳に入ります。装着感には不満が無いと思います。

音質について
「AFUL MiracleOne」ってどんなイヤホン?
- ほぼニュートラルに、ほんのり暖色を足した音色
- 上下のレンジが広いフラット寄りの特性
- 狙った帯域をじっくり観察できる描写の精度
- 音がふわっと浮かぶホログラフィックな空間
- 響きまで感じさせる聴き取りやすいボーカル
- 量より反応で支えるモニターライクな低域
- 上流の質がそのまま出る
分かりやすい誇張などで耳を騙すタイプではなく、どの帯域も素直に描きつつ、音粒の細かさと空間の余白で聴かせる、精度重視の1DDイヤホンという印象。低音の量感や音圧の迫力を求める人には大人しく感じるかもしれませんが、録音の響きや楽器の質感までじっくり聴き込みたい人、モニター寄りの1DDを探している人には、かなりハマる一本かも…!
周波数特性
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB)
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことをご理解の上でご覧ください。
平均

左右

評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- Lotoo PAW GOLD TOUCH
- 白い軸(Clarity)の付属イヤーピース
全体的な音色や特徴
温度感はほぼニュートラル。そこに、わずかに暖かいニュアンスが乗っているくらいです。
特性はフラットに近いものの、再生帯域そのものは上下に大きく伸びているように感じました。特定の帯域が張り出さないため、意識を向けた帯域の音をそのまま観察できる精度があります。音粒の一つひとつが整っている印象で、粗さを感じる部分は見当たりませんでした。
音の聴こえ方が面白いと思ったのですが、音粒が立体的に浮かび上がるホログラフィックな描写で、空間の中に余白を残しながら音を配置するような描写。響きや倍音は強調されていないにもかかわらず、レンジの広さによってしっかりと乗ってきますね…!
ボーカルは前に出てくる感じは強くはありませんが、前傾型と同等の聴き取りやすさがあり、響きやニュアンスまで感じさせる表現力の高さが印象に残りました。
低音域
量感は控えめでフラット寄りで厚みを足す成分も最小限。曲に必要な分だけをきっちり鳴らす、モニターイヤホンに近い鳴り方でしょうか。
そのぶん反応はとても良く、キックやベースの立ち上がりが速く、引き際もスッと速め。膨らみやダルさを感じる場面は無し。低域が濁らないおかげで、上の帯域の見通しもクリアでスッキリしているのが特徴だと思いました。
楽曲の土台を支えるのに必要な低域を、過不足なく描いてくれるキャラクター性。EDMやヒップホップで低音の量感を楽しみたい方には、物足りなく感じるかもしれません。
中音域
誇張や演出めいた味付けは、ほとんど感じません。なのに粒立ちはとても良い…。余裕を持って鳴る細かな音粒がたくさん集まり、最後にひとつのアンサンブルとしてまとまる…そんな出音でした。
倍音も豊かで、アコースティックギターの胴鳴りやピアノの響き、弦の擦れる音がとても生々しく描かれます。目の前で演奏しているようなリアルさがあるように思います。歪ませたエレキギターやシンセの音も、粒が潰れずに再生してくれます。
低域が中域に被ってくるような、温度感のある厚みは少なめです。そのかわり反応の良さが際立っていて、細かいフレーズでもクッキリハッキリ。この粒立ちと反応の速さを1DDで出せているのは、素直にすごいなと感じましたね~。
ボーカル
男女ともに前のめりにはならず、伴奏とのあいだに少しだけ余白を置いて、半歩前に出てくるくらいの距離感。声はとても澄んでいて、口元の細かな動きまで見えるようなディテール豊かな描写。ほんのり艶っぽさはあるものの耳障りな成分は少なく、作り込んだ感じのない素直な声に聴こえました。リアルで…良い(笑)
解像感が高くクリアで、輪郭もしっかりしている。それなのに、声の周りには柔らかな響きがまとわりつく。うーむ…!これがAFUL MiracleOneのボーカルの個性かなと思います。
高音域
上の帯域はよく伸びます。シンバルのシャラシャラした響きや、ハイハットの細かく擦れる音も、耳を向ければしっかり拾えますね~。上方向のレンジが広いからか、掠れや倍音、響きのように音に付帯する細かな成分まで感じ取りやすいように思います。
でもこれが誇張してるようには感じないのが素晴らしいポイント。1DDらしく上の帯域もほかの帯域と同じ質感や音色で繋がっているので尚更違和感がありません。響きが重なっていくアンビエント系の曲では、この余韻の細かさが特に気持ちよかったですね。ほわぁ(〃ω〃)
音場・空間表現
全体の空間の広さそのものはやや広めかな~もしくは普通くらいかな~みたいな感覚。でも、本作の描写はその空間の中でフワッと浮かび上がるような立体感のある描写が何よりも特徴だと思いました。
一聴した時はフラット傾向な音作りなこともあって少し狭いかな?と思いましたが、聴けば聴くほど音の周りの余白や描写の良さに気づきます。そして空気感もしっかりあって、音の立ち上がりがリアル。これがまた良い。
ダイナミクス
パンチはあるのに、耳を押してくる圧は少なめ。耳当たりがとても良いタイプだと思います。
音圧の強いイヤホンに慣れていると、最初は大人しく聴こえるかもしれません。無理に盛り上げず、細かな音粒を精度よく描いていくイヤホンだと分かったうえで聴くと、良さが伝わりやすいはずです。
長所と短所
長所
- 描写の精度が高い
- 倍音や響きが生々しい
- 声の周りに響きをまとった、聴き取りやすいボーカル
- 低域が膨らまず、立ち上がりも引き際も速い
- 小さく軽いシェルと、中が見える透明デザイン
短所
- 低音の量感を求めると物足りない
- 良さに気づくまで少し時間がかかる
- 上流の質に左右されやすく、安価なDACでは実力を出しきれない
音圧や低音の迫力で楽しみたい方には合わないかもしれませんが、音の質感をじっくり聴き込むためのイヤホンとして興味があれば強い相棒になるかも…!
こんな人におすすめかも。
- アコースティックやジャズなど、生楽器の響きを味わいたい人
- ニュアンスや空気感まで聴き込みたい人
- モニター寄りでフラットな1DDを探している人
- 音圧の強いイヤホンに少し疲れてきた人
強い味付けを求めず、音そのものの質を楽しみたい方に向いたモデルなのかなと思います。普段の再生環境にこだわっている方ほど、AFUL MiracleOneの描き込みの細かさを引き出せると思いますよ~(≧∇≦)
総評と感想
昨今のイヤホンとしては極小と言ってもいい6mmのドライバーを積んでくるとは思っていませんでしたが、あの螺旋状の構造を活かしたり、バランスを考えたりした結果なんだろうなぁと思いました。
実際に聴いてみると、派手な強調に頼る作りは一切なく、音粒の精度と空間の描き方で勝負しているイヤホンだと思いましたね。誇張をできるだけ削ぎ落として、ピュアに忠実に鳴らすよ!という狙いが伝わってくる音です。小さなドライバーと内部の音響構造をまとめて設計した、というAFULの説明にも聴いていて納得がいきます。
値段的には多ドライバーのハイブリッド機もずらりと並ぶ価格帯で、競合はたくさんいます。でもモニター寄りの素直な1DDを求めるなら、選択肢に積極的に入れるべきレベルの完成度でした。
購入先
筆者に質問コーナー
mondにて匿名の質問を受け付けております、興味があれば是非質問してみてください!
