こんにちは!今回レビューするのは『Binary EP321 MEMS』です。
注目の「MEMSドライバー」搭載イヤホンとしてSNSでも注目を浴び、定期的に話題に上がっているようですね(^_^;)
一体どんな音を聴かせてくれるのかとワクワクしながら手にとってレビューに望みました。

製品概要
Binary EP321 MEMSは、中国のBinary Acousticsより2025年11月に発売された有線イヤホンです。
最大の特徴は『MEMSドライバー』
これは半導体技術で作られた極小のユニットのことで、高精度かつ小型・軽量な振動板によって繊細な高音域を再生できる先進的な技術です。
本来MEMSドライバーは専用の増幅回路が必要とされてきましたが、EP321では内部に組み込まれた駆動回路によって通常のオーディオプレイヤーに直接繋いで駆動できるようになっています。
このMEMSユニットに加え、10mm径のダイナミックドライバーに6mmのパッシブ振動板を加え、そして中域〜高域に3基のバランスドアーマチュア(BA)ドライバーを搭載した合計6ドライバー構成となっています。
Binary Acousticsについて
ブランドのBinary Acousticsは2017年設立と比較的新しいですが、独自の技術や独自のデザインが光る製品を多く輩出しており、意欲的なブランドという印象があります。
Binary EP321 MEMSもまさにその姿勢が表れた製品なのではないでしょうか。
仕様
| 構成 | 2DD(10mmダイナミック + 6mmパッシブ振動板) + 3BA + 1 MEMS |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 8Hz〜40kHz |
| 発売日 | 2025年11月28日 |
| 価格 | $309(投稿時) |
パッケージ
今までに見たことのない光沢と凹凸で表現されたブラックの化粧箱に収められています。シンプルながら洗練されたデザインで、これまでの製品とは違うことを表現しているようにも感じられます。

箱を開けると、まずイヤホン本体がしっかりとウレタンフォームの中に固定されてお出迎え。
フェイスプレート部分には保護フィルムのようなシートが貼られていますし、輸送中の傷対策もしっかりされています。付属品はそれぞれ専用のスペースやケースに収まっていますね。

付属品
付属品も一通り必要なものは揃っています。
イヤーピースはシリコン製がS/M/Lサイズそれぞれ2ペアずつ(計6ペア)付属しています。(なぜ2ペアずつなのかは気になるけど。)

キャリングケースは思ったより大きめで、イヤホン本体とケーブル、イヤーピース等の付属品全てを余裕で収納できるサイズ感でした。
イヤホン本体
デザインの美しさに目を奪われます。フェイスプレートはステンレス製。幾何学模様のような格子状のデザインで、光の当たり具合によって色味が変化する構造色になっています。
見る角度や照明の当たり具合でブルーやパープル、グリーンなど様々な輝きを見せてくれます。

光の距離や周りの暗さによっても様々な表情を見せるフェイスプレートです。
ステンレスにレーザーを当てて微細な凹凸を作って作り上げている色合いのようです。

背景が暗いと、より輝きを感じられますね。片側にはMEMSの文字が入っていますし、これは自信の現れかな…?(笑)

ハウジングは部分はクリア樹脂を使った3Dプリントで成形されているようです。
透明度が高すぎてスケスケ。内部に配置されたドライバーや配線が透けて見えます。手触りは滑らか。よく磨かれています。

超拡大してみると、3Dプリントで造形されたものだというものがよくわかります。

MEMSドライバーについて
本作の最大の特徴のMEMSドライバーは、以下の画像の中央に配置されています。よく見るとMEMSの文字が確認出来ると思ます。

イヤーピース
イヤーピースは1種類、3サイズの合計6ペアで構成されています。

ハウジングが透明なデザインなので、透明の液体シリコン系イヤーピースが付属していたら嬉しかったのに…(笑)
と個人的には思いました。
ケーブル
付属するケーブルは本体の作りや豪華さに比べるとやや大人しめでシンプルなもの。
ミドル帯のイヤホンに付属するケーブルとしては思ったよりもややチープ感を感じる所ではあります。

ケース
付属品紹介でも少し触れましたが、大きめで付属品の全部が余裕を持って入るサイズ感です。
ケーブル同様、本体の作りの良さに対して、ややチープ感を感じますが実用的だとは思います。

音質について
『Binary EP321 MEMS』の特徴をいくつか書き出すと…
- 厚みのある低音
- 高音の情報量がミドル帯を越えてるかも
- 繊細で粒の小さい表現力
- 分かりやすく解像感高め
- ボーカルはかなり前傾的(※かも?)
- 高音域の良さが光りつつ、弱点もいくつか…
周波数特性
計測データは以下の通りです。※素人による計測の為、参考程度にお願いします。
片側を94db@1000Hzに合わせ計測。

周波数特性は問題なく左右のマッチングが取れています。高音域~中高音域に減衰が見られませんね、高音域に関しては情報量のシャワーになりそうな…?
評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
視聴環境
- Lotoo PAW 6000
- 標準ケーブル
- 付属イヤーピース
サウンドインプレッション
今回のレビューはちょっと口語調で素の表現で執筆します。その方が伝わりやすそうだから。では早速…
良いか悪いかは置いておいて、高音域の情報量やべぇ( ;゚Д゚)
ちょっと粗さはあるような気はするものの、この価格帯で今まで得られなかった繊細な情報量を感じます。
高音方向にやや敏感な私には、サ行に不要な鋭さや刺さりを感じるものの、一般的には刺さらないギリギリを攻めた高音の情報量と形容されるような出音になっているのではないでしょうか。
ライブ感と量感のある低音、適度に温度感あるボーカル、程々に良い定位。
SNSでも皆さんが絶賛するのも頷けますし私も第三者にオススメするイヤホンとしては選択肢に積極的に入れたいイヤホンだと思います。
がしかし、良い点ばかりだけでなく、弱点も多いイヤホンだとも同時に感じました。
正直、短時間の試聴だと弱点に気づきづらいかもしれません。
長時間試聴して他の同価格帯の製品と比べて感じて気付いた弱点などをたくさん語っていこうかなと思います。
早速少し話すと、全体的にはやや寒色系で弱ドンシャリ的な音色で、低音もなかなか厚みがあり、高音も前述した通り情報量豊か。しかし、中音域が低音に喰われてるのかやや引っ込むので抜け感がイマイチ。
低音はスピード感についていけていない印象もあったり、クラシック・オーケストラの再生時に顕著に余韻の薄さと背景が暗くなりきらない部分に弱点があるように思います。
低音域
すみません!ちょっと辛口気味になりますがご容赦ください。
まず低音域ですが、しっかり厚みと存在感のある低音ではあります。重低音もしっかり沈み込むように出ますし、量感もたっぷり。しかしややタイトさに物足りなさがあり、輪郭が微妙に粘っこく弾力がある「ダルさ」のある質感で少々上の帯域をマスクする印象があります。さらに低音の距離が妙に近い(^_^;)
空間をやや支配的に「ぼやぁ~」っと埋めるような低音という表現が近いかなと感じました。
中音域から高音にかけてとてもキレやレスポンスの高さがあるにも関わらず、低音のみがスピード感に追いつけていない印象で質感にかなり大きな差を感じています。
ビジュアルからくる透明度や近未来的なデザインから連想する音とは少々かけ離れているかな…と。
しかし良い方向に捉えて書けば、『重低音沈み込みが深く量感もたっぷりで、キックやエレキベースが鳴れば耳だけでなく身体にも振動が伝わってくるような押し出しとライブ感のある、楽曲をぐっと下から盛り上げてくれるタイプで、迫力や重低音を重視する方にもオススメ出来るような低音域』という表現も出来る歯がゆい感じです。
DAPとの相性かと思い、通常はレビューで使いませんが、LUXURY&PRECISION E7 AD1955を使って聞いてみると…ぼやっとした感じと「ダルさ」は見事に消えましたが…それでもどこか物足りない低音域の解像感。
一件落着かと思いきやもう少し立体感のある低音が出たらなぁ…と思う所で落ち着きました。 難しいですね。
中音域
やや引っ込んだ感覚と薄い膜を被せたような抜けの悪さはあるものの、音の情報量そのものの多さは素晴らしく、これまでに聞こえてこなかった音粒までしっかり再生してくれる基本性能の高さを感じます。
定位もほどほどに良く、楽器の音も主張しないバランスの整った中音域といった感じではありますが、バイオリンやギターの響きや余韻は今ひとつ…物足りなさを強く感じます。おかげで生っぽい実像感が薄くやや人工的な音に…
情報量が多いからこそかもですが、余韻や響きに一歩物足りなさを感じてしまいます。背景がなかなか暗く沈まず、音が空間に浮かび上がる感覚になってくれません。ずっとグレーの中に音が出てくる感じ。
…んん…? 長時間聴けば聴くほど、中音域の繊細な音が低音にかなり喰われてるような気がしてきました。
ボーカル
ここまで厳しい評価が多かったものの、ボーカルに関してはそこまでネガティブな印象はなく、ボーカルには適度に温度感を感じますし、リップノイズや口から漏れる吐息の温かみを感じられる塩梅になっています。
強いて言えば、やや平面的な聞こえ方はしますが、価格を考慮すれば十分すぎる表現力でしょう。
ボーカルの距離感は並といった感じで程よい位置に聞こえますが、特に女性ボーカルについては歌う方の声質によっては極端に前傾的に聞こえる場合があります。なんでだろう?
高音域
キタ━━(゚∀゚)━━!!
ここがBinary EP321 MEMS最大の注目ポイントでしょう。実際に聴いてみて、「ああ、これがMEMSドライバーの実力か…!」と感嘆するほど。高域の伸びが素晴らしく、シンバルの金属的な響きや弦楽器の高音の細かいニュアンスが驚くほど繊細かつクリアに描かれます。
刺さるギリギリまで滑らかに高域を描き出す性能の高さを感じます。高音域を重視する方なら口がパッカーンと開いて閉じなくなりそうです。高音域だけ見れば余韻たっぷりの空にスカッと抜ける開放感のあるサウンドです。
ESTとはまた質感が違う気はしていますが、経験値がまだ浅く言語化出来ないのが申し訳ない所。
でも「高音域が綺麗なイヤホンが欲しい」という方には自信を持って推せるクオリティだと思います。
一つ悩ましいのは、高音域の綺麗さは情報量の豊かさなのか、ヌケ感や奥行きと余韻のあるリアリティを持って綺麗と言うのか。
私はどちらかといえば後者タイプ。しかし本作は前者のタイプ。 果たして高音域を綺麗と読んでいいものか悩ましい。
音場・空間表現
低音域の支配感や奥行方向の余韻の薄さが仇となっている印象。
高音域のヌケの良さのおかげで上方向に広さはあるものの、3D的な奥行きを使った空間表現はやや弱めで、そこまで広さは感じません。普通ってくらいです。
しかし定位の正確さは比較的明確で、整頓された位置で音がしっかり鳴ってくれる印象。
解像度
中音域から高音域にかけての素の情報量は豊かで解像度も高いなと感じられます。
ただ、その情報が低音域にマスクされているような、喰われのある印象は否めず少々勿体ないなと感じました。
しかし、高音域の分解能はなかなかのもので、これまでのミドル帯の製品ではなかなか見られなかった繊細さがあるので好みに噛み合えば良い相棒になるのではと思います。
装着感について
フェイスプレート側から見る以上に、反対側(透明なハウジング)は人間工学を感じる有機的なフォルムをしていて、イヤホンがやや大きめながらすっぽりと耳に収まる装着感の良さがあります。

長所と短所
長所
- 情報量豊かな高域
- ドンシャリ的のリスニングサウンド
- ライブ感ある豊かな低音
短所
- やや音像が薄い
- 空間が思ったより広くない
- 低音が別帯域を喰う
良い点と悪い点が同じくらいある先進的な技術が詰まったイヤホン。
まだ改善の余地はたくさんあるのかもしれないですね。 正直短時間の試聴ではデメリットを感じづらいかもしれません。

高音域すげー!ボーカルまぁまぁ良いね、低音どうした?
そんなイヤホン。
まとめ
『Binary EP321 MEMS』は、「MEMSドライバーって実際どうなの?」というオーディオ好きの好奇心に、かなりストレートに答えてくれるイヤホンでした。
特に中高音域や高音域の情報量と分解能は、この価格帯ではなかなか体験できないレベルで、「高音すげぇ…」と素直に唸るレベルでした。
シンバルや弦の細かなニュアンスやボーカルのサ行の音の細さははMEMSドライバーの存在感を強く感じた部分です。
本作、一聴した時は低音は量感と迫力重視でライブ感はあるものの、スピード感や制動力の面では中高音域と質感の差を感じやすく、中音域が低音にマスクされがち。音場も上下方向の広がりはあるものの、奥行き表現や立体感は控えめで、空間・奥行き・余韻・実像感が重要なクラシック系をじっくり聴くと物足りなさが顔を出してしまいます。
ただしこれは「ダメ」という話ではなく、明確にキャラクターが立っているということ。
・高音域の繊細さと情報量を最優先したい
・分かりやすい解像感と刺激が欲しい
・ライブ感のある低音が好き
これらの特徴がハマる人にとっては、かなり惹かれるイヤホンではないでしょうか。
逆に、自然な余韻や奥行き、実在感を重視するタイプには好みが分かれると思います。
良い点と弱点がはっきり同居した、「先進技術を詰め込んだ挑戦作」完成度よりも、未来の可能性の一端をちょっと覗くことが出来た気がしちゃう、そんな製品でした。
高音域すげー!
ボーカルは思ったより悪くない。
低音は……好み次第。
そんな、語りたくなるイヤホンでした。
購入先
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