今回ご紹介するのは、「HIDIZS MY LIN (Special Edition)」です。
箱を見た瞬間、HIDIZSってキャラクターものも手掛けてるんだ…?と少し物珍しいものを見る目をしてしまいました。でも中身は超本格的。HIDIZSで人気のイヤホン「MS2 PRO」をベースに、低域の量感を中心にサウンドチューニングを変更した特別版になっているようです。

HIDIZS様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
「HIDIZS MY LIN (Special Edition)」は、MS2 PROの設計をベースに音作りを見直した派生モデルです。MS2 PROが中高域の明瞭さを押し出したチューニングであるのに対し、本機はHarman IE 2019 Targetを基準に、サブベースの沈み込みを深め、ミッドベースを引き締め、上中域の鋭さを和らげる方向へ再調整されています。

ドライバーは、PU+PEEK複合振動板にナノレベルのDLCコーティングを施した10.2mmデュアルキャビティ・ダイナミックドライバーと、高域用の「Silvercore BA」の2基構成です。ダイナミックドライバーにはN52グレードの内外デュアル磁気回路を採用し、駆動の制御性を高めています。
筐体はZA12亜鉛合金の一体成形で、フェイスプレートは本機専用のカーボンファイバー調デザインです。ベントによる内圧緩和機構を備えています。ノズルはネジ式の交換構造で、「Charm Red(バランス)」「Midnight Black(低域寄り)」「Crystal Clear(高域寄り)」の3種類のチューニングフィルターを付け替えられます。ケーブルは銀メッキOFC線を用いた0.78mm 2Pin仕様で、購入時に3.5mmまたは4.4mmプラグを選択できます。
| 構成 | 1DD+1BA 10.2mmダイナミックドライバー ×1 + Silvercore BA ×1 |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 20Hz〜40kHz |
| インピーダンス | 17Ω |
| 感度 | 111dB |
| 発売日 | 2026年5月13日 |
| 価格 | 129ドル(ローンチ価格99ドル) |
パッケージ
外箱は白を基調に、オリジナルキャラクターのイラストが大きく描かれたデザインです。個人的にはHIDIZSさんがキャラクターイラストを活用した製品を出すのは珍しいような印象があります。ちょっと硬派なイメージがあったので…(笑)

パッケージを開封すると、トレイに各々付属品が収まるとともに、キャラものパッケージらしいアクスタ・シールなどが同封されていました。

イヤホン本体
フェイスプレートは黒地にカーボンファイバー調の模様と、紫や青のフレークが封入されたデザインです。これがまた独特な立体感がありますし、左右で模様の出方が違うので、個体ごとに表情が変わるのも面白いですね。
周囲の鏡面仕上げの金属ボディとの組み合わせもあり、パッケージの印象とは違ってイヤホン本体はかなりシックにまとまっています。

シェル内側とノズル部分です。筐体は亜鉛合金製なので見た目以上にずっしりとした重量感があります。

ノズルにはフィルターの種類を示すカラーリングがあり、出荷時は赤リングのCharm Redが装着されています。2Pin
ソケットはフラットタイプです。
付属品

- イヤホン本体 ×1ペア
- イヤーピース 2種類 合計6ペア
- 付属ケーブル ×1
- キャリーケース(ポーチ) ×1
- 交換式ノズル ×3ペア(1ペア装着済み)
- シール ×1
- クリーニングクロス ×1
- アクリルスタンド ×1
- その他、説明書など
ケーブル
付属ケーブルは銀メッキ線で、被覆は厚めですが柔らかめの仕上がり。取り回しに苦はありません。
2Pinコネクターのハウジング部分は樹脂製で巨大で掴みやすいです!。ちなみに左右識別用の赤・青のマーキングがあります。

プラグ側は上品なさらっとした仕上がりのアルミのハウジングですね。
イヤーピース
イヤーピースは黒と白の2種類がS・M・Lの3サイズずつ付属します。外箱の台紙では黒が「Bass」、白が「Balanced」と表記されていました。

軸の硬さや傘の形状も異なるので、フィルターとあわせて音の調整幅として使えますね。
交換ノズル
交換用ノズルは、スポンジ入りの小さなクリアケースに収められています。ネジ式なので付け替えは簡単ですが、パーツが小さいので紛失には注意したいところです。
- Charm Red(標準・バランス)
- Midnight Black(低域寄り)
- Crystal Clear (高域・明るめ)

キャリーポーチ
ケースは板バネ式の開口部を持つポーチ。ハードケースではないので、持ち運び時の保護は最低限ですが、逆にポーチの方がポケットに放り込みやすいかもしれませんね。

装着イメージ
装着するとこんな感じです。サイズはしっかり大きいものの、ノズルに向かって絞られていて大きなハウジングが直接耳に触れにくい設計です。
とはいえ、カスタムIEMライクな形状のイヤホンに比べると密着度は低めで遮音性は標準的なレベル。

音質について
最初に結論から。
- 丸みのあるバランス型ドンシャリ
- 量感多めでも攻撃的でない低域
- ウェットで甘く柔らかなボーカル
- ピークを抑えた生真面目な高域
- スピーカーのような前方定位
- 解像感より滑らかさを重視
低音に厚みを持たせつつ、全体を丸く優しくまとめた聴きやすさ重視のイヤホンだと思います。搭載されている1BAでさえ、落ち着いた方向性の鳴り方。
それもあってか、中高域の明るさを意図的に抑えているので、ボーカルの透明感や高域の煌めき、抜けの良さを求める人には少し物足りなく感じるかもしれません。長時間でも疲れにくい音を探している人や、音が左右に振られる感覚が少なく前方定位なのでスピーカーで聴くような自然な距離感で音楽を楽しみたい人にオススメですね!
周波数特性
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB)
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことをご理解の上でご覧ください。
平均

左右

私の個体は少々左右差がありましたが、実聴では気になりませんでした。
評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- Lotoo PAW GOLD TOUCH
- 交換式ノズル→Charm Red(標準・バランス)
- 付属イヤーピース(白・バランス)
全体的な音色や特徴など
おっ…凄く聴きやすいバランス型のサウンド、というのが第一印象でした。音色は少しウォームですが、ウォームに振り切っているわけではなく、優しめにまとまった全体的に厚みのあるサウンドですね。帯域バランスで言えば、丸みのあるドンシャリ…?といった感じでしょうか。
ここまでの説明だけだと、あったかく角が丸いだけのサウンドを想像しがちですが、どっちかというとニュートラルなイヤホンに薄いフィルターを1枚掛けたような、ピークの少ないナチュラルな音作りと言った方が想像しやすいです。刺激は抑えられ、輪郭も少し柔らかめ。低音は多めのバランスですが、それを除けばスピーカーで聴き流しているような、前方定位の自然な聴き心地なのが凄く良いですね…!
解像度は価格帯相応というか意図的に抑えているような音色で、細かな音も拾えてはいますが、一音一音をくっきり描き分けるよりも、全体を滑らかにまとめて聴かせる方向で、BAがあまりBAしていないですね(笑)。粗さを感じさせない質感の良さと、音同士のつながりの自然さの方が記憶に残ります。
※BA…バランスド・アーマチュアドライバー
低音域
低域はチューニングで盛られているだけあって量感は多めです。とはいえ、支配的・攻撃的な低音ではないのは個人的に高ポイント。質感はややダークで、適度にタイトながら緩すぎることもありません。キックドラムやエレキベース、シンセベースが鳴った瞬間には、ライブ会場の空気が揺れるような低音がよく響きます。
攻撃性が少ないぶん楽曲によく溶け込み、中低音が膨らみすぎることもありません。鳴ったあとは素直に収束するので、量感のわりにモコモコした印象は少なめですね。
低音は帯域全体を持ち上げたような盛り方なので、もともと低音の多い楽曲と組み合わせると多少粗さが出る場面もありました。ただ、気にするほどではないかなと思います。
中音域
中域は低域から自然につながる温かみのある質感で、楽器の音色に柔らかさと厚みが乗ります。エレキギターやアコギ、ピアノは音の粒が太めに描かれますが、耳当たりの良い丸みがある音色ですね。
中高域の明るさを演出する部分は、はっきりと抑える方向で制御されています。そのため少々閉塞感があり、抜けの良さという点では控えめに感じました。とはいえ、刺激を抑えて聴きやすさを優先するという製品のコンセプトを考えれば、個性の範囲に収まるのかなと思います。
ボーカル
ボーカルは伴奏と横並びの位置関係で、ウェットな質感で聴こえてきます。中高域が抑えられた音色なので、声の明るさは落ち着いた印象です。それでも男女ボーカルともに違和感なく、音場の中心に丁寧に配置されている感覚があって、とても聴きやすい。
ボーカルに強い透明感を求めるよりも、甘さや柔らかさを好む人にとても相性が良い鳴り方だと思います。この個性のおかげでサ行の刺さりも気にならず、耳当たり優しく聴き続けられますね。
高音域
1DD+1BA構成なので、高域はBAが担う場面の多い帯域です。ただ、言われなければBAの存在を忘れるくらい、控えめに制御されていました。
上まで伸びるBAらしさはありつつも、キラキラとした輝きを演出するのではなく、丁寧に音を配置していくような生真面目なタイプの鳴り方です。シンバルやハイハットも粒自体は細かいのに、ピークを感じさせない耳当たりの良さがあり、長時間聴いても疲れにくかったですね。
量も控えめで、音全体は少し落ち着いた、ややダークな方向。刺激を抑えながらも空気感や余韻は残っているので、物足りなさを感じるほどではありません。ただ、高域の煌めきや鋭いアタックが好みの人には、少しおとなしく感じるかもしれませんね。
音場・空間表現
空間は少し前方にまとまって展開される、スピーカーで聴いているようなサウンドです。ホール感や余韻の表現は丁寧ですが、そのホール感自体はコンパクトに落ち着く印象で、小さめのライブ会場という表現が個人的にしっくりきました。
定位は良好で、ボーカルは前方の中央、低域は下、高域は上方向からと、描き分けそのものは上手です。空間を活かしたオーケストラやクラシックでは窮屈に感じる場面もありますが、地下の小さなライブハウスで聴く音と思って楽しむと、なかなかリアリティがあります。こういう没入感もアリだな…?と思いました(笑)
長所と短所
長所
- 刺激が少なく長時間でも疲れにくい
- 量感はあっても攻撃的でない低域
- サ行が刺さらない柔らかなボーカル
- スピーカーのような自然な前方定位
- 定位の描き分けが分かりやすい
短所
- 中高域が抑えられ抜けは控えめ
- ボーカルの透明感や明るさも抑える方向
- 高域の煌めきを求めると大人しい
- 大編成の楽曲では空間がやや窮屈

…長所と短所というか個性の裏返しでしかないと思う。
煌めきや抜けの良さを取るか、優しさと聴き疲れのなさを取るかで評価が分かれるタイプなので、自分がどちらを重視するかを基準に選ぶのが良いかなと思います。強いて言えば、抑えられたBAの鳴り方&前方定位という部分が本作の強い個性なので、それも加味して判断されると良いかなと。
総評と感想
派手なパッケージとは裏腹に、音作りはとても落ち着いた大人っぽいイヤホンだと感じました。解像度や明るさを競うのではなく、あえて角を丸めて空間も誇張せず、「聴き心地の良さ」に振った所が、そのまま本機の個性になっていますね。
刺激的な音でテンションを上げたい人より、好きな曲を心地よく長く聴き続けたい人のためのイヤホン。後はイヤホンらしい脳内定位の音作りが苦手な方にオススメしたいですね。前方定位でスピーカーみたいな聴こえ方するイヤホンはなかなかお目にかかれません。
もし機会がありましたら聴きやすさを体験してみてほしいですね!
こんな人におすすめかも。
- 刺激の少ない優しい音が好きな人
- 長時間でも聴き疲れしたくない人
- サ行の刺さりが苦手な人
- 低音多めでも穏やかな鳴り方が好きな人
- スピーカーのような自然な聴き心地を求める人
- ボーカルに甘さや柔らかさを求める人
作業中のBGMから、じっくり音楽に浸りたい夜まで、肩の力を抜いて付き合えるタイプのイヤホンでした。
レビューは以上となります。ここまでお読み頂きありがとうございました。
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