こんにちは、Trefle Labです。今回レビューするのは、「LETSHUOER S15」です。
平面駆動型ドライバーと独自研究開発の6mmパッシブフィルタモジュール(PFM)を搭載した本機は、ただの平面駆動とは異なる魅力的な音質に進化を遂げた注目のモデルです。
この記事では、仕様、デザイン、音質、装着感といった各側面から本機の魅力を掘り下げ、どのようなユーザーに最適な選択肢となりうるのかを詳しく見ていきます。

製品について
LETSHUOER S15は、中国のオーディオブランドLETSHUOERによって開発された有線インイヤーモニターで、同社の人気モデル「S12」シリーズの後継・発展版として2023年12月に登場しました。
本機は、独自開発の第3世代14.8mm平面磁界駆動型ドライバーに加え、R-Sonic(Resonance Sonic)と名付けられた6mmパッシブフィルタモジュール(PFM)を組み合わせた「PLANAR+PFM」構成が最大の特徴となっています。
価格は日本円で5.7万円、執筆時点での実売価格は約3.7万円前後です。
仕様について
製品仕様については以下をご覧ください。
構成 | 14.8mm平面駆動ダイナミックドライバー(第3世代)×1基 6mm「R-Sonic」パッシブフィルタモジュール×1基 |
---|---|
再生周波数帯域 | 20–40kHz |
感度 | 106dB@1kHz |
インピーダンス | 30Ω |
ケーブルプラグ | 2.5mm / 3.5mm / 4.4mmプラグ |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2Pin |

パッケージ外観と付属品について
パッケージ
LETSHUOER S15のパッケージはシンプルなグレーに特徴的な鈎爪のような意匠が施されたボックス。シンプルながら重量感があり、モノが詰まっているというワクワク感を与えてくれます。

開封を進めると、磁石で閉じられた外箱の中から、スライド式の内箱が現れます。その構造や佇まいは、まるで高級ジュエリーボックスのよう(褒めすぎ?)
内部のレイアウトも美しく整えられており、それぞれのパーツが、まるで宝石を扱うかのように丁寧に仕切られ、収められています。

紙製のボックスながら、手に取るとしっかりとした重量感があり、手触りも滑らかで上質。素材の質感からも「良いものを手にしている」という確かな満足感が伝わってきます。

キャリングケースや交換式プラグも、それぞれ専用に設けられた窪みに丁寧に収められており、見た目にも整然としていて美しいだけでなく、ユーザーへもわかりやすく配慮が感じられる設計です。
付属品
付属品は以下の画像のようなものが同封されています。

- LETSHUOER S15 本体
- イヤーピース2種類 (S/M/L) 各1ペア
- ケーブル
- 交換式プラグ(2.5mm / 3.5mm / 4.4mmプラグ)
- キャリングケース
- 説明書
- ポスター?
本体
LETSHUOER S15の本体は、3Dプリントによる高精度な樹脂製シェルと、金属製のフェイスプレートのハイブリッド構造を採用しています。全体のシルエットは流線型で、耳に自然にフィットするデザイン。

マットな質感を持つパープルブルーのシェルは、、落ち着きと個性を兼ね備えた仕上がり。金属製のフェイスプレートには本機の特有の意匠が施されており、存在感を感じさせます。

よく観察すると、2Pinソケットの周囲に3Dプリント特有の積層模様が確認でき、この製法ならではのディテールを感じさせます。量産品でありながら、どこか手作り感のある有機的な質感も魅力のひとつかも!?
見た目以上に印象的なのは、滑らかで肌なじみの良い手触り。ひんやりとした金属の重厚感こそありませんが、その代わりに装着時の快適性が際立ちますね。
付属ケーブル
付属のケーブルは、白と黒が混ざり合ったツイスト構造が特徴で、視覚的にも個性的かつ上品な印象を与えます。材質は単結晶銅銀メッキ線材を使用し、音質と耐久性のバランスを確保。
取り回しについてはややしっかりとした硬さがあるものの、極端に扱いづらいということはなく、使用中のストレスはほとんど感じません。むしろ堅牢さを感じさせる作りは、長期使用における安心感につながっています。


2.5mmバランス、3.5mmシングルエンド、4.4mmバランスという3種類のモジュラープラグが同梱されており、再生機器に応じて手軽に付け替えることが可能です。
各プラグはL字型(90度)デザインを採用しており、ポータブル使用時にもケーブルの出っ張りを最小限に抑ええられ、使用者への配慮が行き届いた設計です。
イヤーピース
LETSHUOER S15には、大口径タイプ(青)と小口径タイプ(半透明)の2種類のシリコン製イヤーピースが付属しています。どちらもS/M/Lの3サイズ展開で、ユーザーの耳の形状や好みに応じて最適なフィットを選べます。

どちらのイヤーピースも、柔らかく肌触りの良いシリコン素材を採用しており、長時間の装着でも圧迫感や耳の疲れを感じにくい設計です。
本体のハウジングが耳の形状に沿うように張り付くようなタイプではないので、遮音性は平均的ながら日常的なリスニング環境であれば十分でしょう。
音質について
LETSHUOER S15の特徴を簡単に表すならば…
「自然な繊細感と迫力と落ち着きを高い次元で両立したウォームなイヤホン」
といった感じですね。
音の傾向は全体的にバランスを重視したW字型チューニング。中低域が立体感とほんのりとした温かみがあり、ボーカルは適度に前に出て、聴き手に寄り添うような距離感で描写されます。
繊細で伸びやかな高音方向への伸びやかさもありますが、刺さらない領域で余韻豊かに響くので長時間でもリラックスして音楽に浸れる「大人のイヤホン」みたいな印象があります。
早速ですが聴覚上の音のバランスのグラフから見ていきましょう。
※聴覚上のイメージで、計測データを元にしたものではありません。

LETSHUOER S15は、以前にレビューしたCadenza 4やMystic8と比べても、低音から中音域にかけてより豊かで、落ち着いたニュアンスのチューニングが施されているように感じます。ただし、「まったくの別物」というわけではなく、あくまでLETSHUOERらしさを軸に据えた上で、絶妙にキャラクターを調整したといった印象です。
同社が得意とする、過度な誇張のない自然な音作りは健在で、そのチューニングのバランス感覚はまさに職人技。どのモデルを選んでも一定の完成度が保証されている安心感があり、S15もその流れをしっかりと汲んでいる一台だと感じます。
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
視聴環境
- iBasso DC-Elite+外部給電 (AKLIAM EC02+ddHiFi TC09L)
- iBasso DX340 (参考程度に使用)
- 付属のイヤーピース(ブルー/ワイドボア)
- 付属のケーブル
音色
全体としては低域から中域にかけて豊かに描かれる、ニュートラル寄りのバランス型。その中にも温かみとリスニングライクな柔らかさが織り込まれており、聴き手を自然とリラックスさせるようなチューニングです。音の細部を捉える分析力は持ちながらも、決して過度に鋭利にならず、曖昧さも感じさせないような絶妙な位置に着地した音作りが印象的。
疲れた一日の終わり、ソファに身を委ねて音楽に包まれるような、そんな“大人のリスニング”にぴったりの落ち着きと品のあるサウンドです。
ボーカルや楽器の輪郭も滑らかで、とくに低域~中音域には特有のしなやかさがあり、アコースティック系の楽器や女性ボーカルとの相性が非常に良好です。
一方で、高域は主張しすぎず、あくまで全体を支える存在として、繊細さと透明感を保っています。細部の情報量はしっかり確保しながらも、耳に刺さらない柔らかい高域が特徴です。
音のキャラクターに過度なクセがなく、ジャンルや機材を選びにくいのも魅力。長時間聴いても疲れにくく、BGM的にも、じっくり音楽に浸るときにも活躍してくれる、懐の深い…音です。
低音域
温かみと柔らかさが織り込まれた質感を持ち、量感もやや豊かで聴き心地の良さが際立ちます。決して過度に主張することなく、あくまで楽曲全体を包容力をもって下支えするような印象で、音楽全体の土台としてとても安定している印象があります。
一方で、平面駆動型らしい俊敏なレスポンスと粒立ちの良さもあり、アタックの立ち上がりにはスピード感があります。深さを持ちながらも、懐の深さや柔軟性と輪郭の明瞭さが共存しており、低音が膨らみすぎることなく、音場の中でしっかりと制御されています。
また、バスドラムとエレキベースといった低域同士の音の分離感が非常に高く、それぞれのパートが明確に聴き分けられます。中低域にありがちな濁りも感じづらく、情報量が多いミックスの中でも、低域の輪郭が失われることはありません。
中音域
また、中音域の中でも下の帯域にやや厚みがあり、中庸ながらも温かみと包容力を感じさせる「かまぼこ型」的なバランスに仕上がっています。これにより、ボーカルやアコースティック楽器にふくよかさと柔らかさが加わり、本機の「懐の深いウォームなサウンド」という印象を、より一層引き立てています。
高音域
再現力に長けつつも、決して耳に刺さらない優しい音色が特徴です。シンバルの金属的な響きやストリングスの余韻も滑らかで、輪郭を損なうことなく自然な減衰でフェードアウトしていきます。この感覚がかなり気持ちが良い…
高域の微細な情報も丁寧に描かれており、リスニング中に「こんな音が入っていたのか」と驚かされることもあります。ただし、シャープで輝かしい高音域を求める層にとっては、少々穏やかに感じるかもしれません。
あくまでも「リラックスして聴ける高域」を志向した、そんなアプローチと受け取るべきかも。
解像度
価格帯を考えると非常に高水準、実売3.7万円のミドルクラスながら、音の輪郭が明瞭で、楽器の分離も高い水準に達し、音の1つ1つを丁寧に描写してくれます。
がしかし、音の情報を数値的な情報と言うならば、本機の解像度の高さは再現性の高い図形としての解像度の高さ。
つまり、デジタル的な細部描写を重視する分析的な解像度というよりは、音楽全体のニュアンスを心地よく味わう方向性に長けた解像度だと思います。
ボーカル
押し出しの強さや艶やかさで主張するタイプではありませんが、湿度感や息遣いのニュアンスを自然に描き出す繊細な表現力を持っています。あくまでナチュラルな距離感で定位し、楽曲全体にしっとりと溶け込むようなボーカル表現が印象的です。
滑らかでストレスのない輪郭を保ちつつ、吐息やブレスなどの微細な空気感も適度に感じられる設計。中域のピークを適切に抑えるチューニングにより、高音域へかけての鋭さや刺さりがなく、長時間のリスニングでも耳疲れしづらいのが特徴です。
音場
LETSHUOER S15の音場は、奥行きと横幅のバランスに優れた立体的な広がりが特長です。低域から中高域にかけて音が層状に展開し、音楽全体が空間を満たすような自然な広がりを展開しているような感覚。
トライブリッドやハイブリッド型に見られるような、音域ごとの強調感や人工的な分離とは異なり、本機は一体感のある音場形成が印象的。クラシックやアコースティック楽曲では、各楽器の定位が明瞭で、実在感のある音像を自然なスケール感を感じられます。
聞いてみた感想
全体として、S15は派手さや過度な演出を抑えつつ、音楽の持つ温度や余韻を丁寧に描き出すタイプだなと感じました。
ボーカル中心の楽曲では、中域の自然な温かさと柔らかな質感が印象的で、声が音楽の中に溶け込むように表現されます。過度に前に出ることはなく、それでいて息遣いや響きの細やかなニュアンスも感じ取れるため、聴き疲れしにくく、長時間のリスニングにも向いていると思いました。舌歯音が全く気になりませんしね。
それにしてもホント懐深いというと、ゆっくり音楽を聞きたくなるというか、心地よさに振った音がするなぁ…
装着感について
人間工学に基づいたデザインと軽量なハウジングの組み合わせにより装着感は良好です。
私自身は特に問題を感じませんでしたが、ノズルがやや短めな設計にも感じられる為、耳の奥までしっかりフィットしにくいと感じるユーザーもいるかもしれません。

また、ハウジング自体が耳の形状に沿ってぴったりと収まるタイプではないため、遮音性は平均的な水準にとどまっているように思います。
長所と短所
長所
- バランス重視の音質
- 豊かで滑らかな中低域
- 音場の広さ
- ウォームな音
短所
- デザインが地味すぎる
- 派手な音好きには合わない
- 安っぽいハウジング
- メタルやEDM等に不向き

私個人の主観ですが、リラックス出来るような楽曲と相性が良い反面、低域の迫力や高域の鋭さを強く求めるジャンルとは相性が悪い気がしなくもないです。(私的には気になりませんが)
あとがき
LETSHUOER S15をレビューの執筆に伴って手元に置いて聴いてきましたが、気づけば手が止まっていました(笑)
派手さやインパクトで惹きつけるタイプではないのに、じっくり向き合うほどにその良さがじわじわと染みてくる…そしていつのまにか目を閉じてリラックスして聞いているような(笑)音に過度な演出がない分、聴き疲れにくいですし。
LETSHUOERのチューニングってやっぱり独特で、音に誠実な印象があるんですね。どこか無理をしていないというか、過度な演出に頼らず、音楽そのものとちゃんと向き合わせてくれる…そんな感覚。
でも製品ごとにそれぞれのコンセプトのようなものを感じて、没個性にはならないチューニングが施されているような…
執筆時点(R6.5/31)の話にはなりますが、高価なイヤホンを買ったばかりですが、しばらくLETSHUOER S15を聞いてしまいそうです。
ここまで長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。
製品購入先リンク


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