こんにちは、Trefle Labのとれふるです。
今回レビューするのは、中国のオーディオブランドTANCHJIM(タンジジム)の新作イヤホン「TANCHJIM FISSION(フィッション)」です。
シングルダイナミックドライバー搭載の有線イヤホンで、4段階の物理フィルター切替と3種類の交換ノズルにより最大12通りのサウンド調整が可能な珍しい製品です。さらには付属のDSP対応USB-Cケーブルとスマホアプリで高度な音質補正もできるなど、同価格帯では珍しい多機能ぶりが光ります。果たしてその実力はいかなるものか、詳しく見ていきましょう

製品について
TANCHJIM FISSIONは2025年6月に発売された有線イヤホンで、載された第5世代DMTダイナミック型ドライバー(10mm径)は、同社フラッグシップモデル譲りの最新技術で、高磁束密度のデュアルマグネット&デュアルチャンバー構造により強力な駆動力と低歪みを実現しています。
筐体はアルミ合金製で、表面に本体デザインに合わせた涙滴型のサファイアガラス装飾が施されたデザインが特徴、背面には調整ノブがあり、ポップスやモニターなど4段階のアナログフィルターで音響特性を調整することが可能です。
さらに真鍮・ステンレス・チタン製の交換式ノズル3種も付属し、各素材ごとに暖かみ・バランス・高音の透明感といった音質傾向の変化を楽しめることも特徴です。物理フィルターとノズルの組み合わせで合計12通りものサウンドプロファイルを一つのイヤホンで実現している点は、本製品最大の魅力でしょう。
3.5mmアンバランス・4.4mmバランスプラグに加え、DSP内蔵のUSB Type-Cプラグも同梱されており、スマホ接続時に専用アプリ「Tanchjim」上でパラメトリックEQを用いた高度なチューニングが可能です。
仕様について
構成 | 1DD 10mm径シングルダイナミック |
---|---|
再生周波数帯域 | 8Hz〜48kHz |
感度 | 126 dB/Vrms |
インピーダンス | 16Ω ±10% |
ケーブルプラグ | 3.5mm / 4.4mmプラグ/DSP対応 USB-C |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2Pin(特殊形状) ※通常より長い2Pinが採用されています。 |

パッケージ外観と付属品について
パッケージ
まずパッケージデザインですが、外箱はコンパクトでシンプルながら上品な仕上がり。
ホワイトを基調とした小ぶりなパッケージに製品名「TANCHJIM FISSION」とイヤホン本体の写真が大きく配置されています。実際に手に取ると箱の剛性もしっかりしており、安っぽさは全くありません。パッケージ表面には「Dual Magnetic Dynamic Driver Tech 5」など本機の採用されている技術を積極的にアピールしています。

パッケージを開封すると見た目のコンパクトさとは裏腹に豪華。イヤホン本体が緩衝材にしっかり固定された状態で登場。
イヤホンの上部には交換用ノズルが配置されています。そこから開封を進めていきますが、付属品の点数が多いにもかかわらず混乱なく取り出せる工夫がなされているような、導線を考慮したよういな開封体験を味わえます。凄く詰まってます(笑)

付属品
付属品は以下の画像のようなものが同封されています。

- TANCHJIM FISSION本体
- イヤーピース1種類 (S/M/L) 各3ペア
- ケーブル
- 交換式プラグ(3.5mm / 4.4mmプラグ / USB-C)
- キャリングポーチ
- 説明書の類 2点
- 交換用ノズル
- 調整用マイナスドライバー
本体
イヤホン本体はアルミニウム合金削り出しで丁寧に造形された筐体で、カラーは上品なシャンパンゴールド調に仕上げられています。フェイスプレートには、サファイアガラスがアクセントとして嵌め込まれ、シンプルながらも静かに目を惹くデザイン。
筐体形状は同社の従来モデル「4U」に近い流線型で、耳への収まりが良く装着感も良好なサイズ感です。ハウジング自体は金属製でですが、小ぶりなため装着時に重さはほぼ感じません。ノズルは耳に沿う角度で設計され、耳奥へもスムーズに挿入出来ますね。

イヤホン背面には調整ダイヤル(物理フィルター)が搭載されています。矢印状のツマミをドライバーで回すことで4段階のモードを切り替え可能です。
全体として工作精度が高く、金属製シェルの剛性感・質感は価格以上に感じられます。デザインとビルド品質の両面で、所有欲を満たしてくれる本体と言えるでしょう。

以下の写真の通り、調節ダイヤルで専用のドライバーを使って音質をチューニング出来ます。

- ATMOSPEHERE
- MONITORING
- NATURAL
- POP

ドライバーのような器具

こちらのドライバーのような器具を使って、チューニングスイッチを変更します。
チューニングによる音質の変化は先程画像で紹介した通りですね。
付属ケース
ケースはハードシェルではなく布製ポーチが付属します。一般的な布ポーチかと思いきや、素材には撥水性のある特殊生地が採用されており水滴を弾く防滴仕様となっているみたいです。ツルツルしています。

衝撃の吸収や保護という観点ではやや心もとない部分はありますが、バッグに入れるならあまり気にならないかもしれません。むしろバッグが雨に濡れてバッグの中まで水分が侵入してもポーチの中は保護出来るので、逆に嵩張らなくて良いのかもです。
付属ケーブル

本体のデザインに合わせたような良いマッチ具合のケーブル。構造は2芯で同軸タイプの線材が採用されているようです。実際に触れてみると高い柔軟紫衣があり、取り回しは良好です。

2ピン(0.78mm)端子を採用していますが、通常の2Pinに比べて2倍近い長さとなっています。
一般的なリケーブルを本体へ挿入しても、音が正常にならない可能性がありますので注意が必要です。
イヤーピース
イヤーピースは程よくコシと柔軟性のあるイヤーピースが付属します。

交換用ノズル
TANCHJIM FISSIONには、素材の異なる3種類の交換用ノズル(真鍮・ステンレス・チタン)が付属しており、音の傾向を好みに合わせて細かく調整できるようになっています。取り付けはねじ込み式で、付属のツールを使えば簡単に交換可能です。

- 真鍮ノズルは、ややウォームで柔らかい音色が特徴。中低域に厚みが出て、ボーカルやアコースティック楽器に温かみが加わります。やや中高音にピークが来る印象もあります。
- ステンレスノズルは最もバランスが取れた仕上がりで、帯域ごとのクセが少なく、自然で素直な音を楽しめます。
- チタンノズルは、低音の引き締まり感や中高域の伸びが良く、すっきりとした明るい音が特徴。透明感を重視したいときや、女性ボーカルをクリアに聴きたいときに向いています。
ノズルを変えるだけで音の表情がと変わるため、自分の再生環境や聴く音楽のジャンルに合わせて『気分で音を着替える』ような感覚で楽しめます。

音質について
TANCHJIM FISSIONの特徴を簡単に表すならば…
「澄んだ解像感と自然な響き、そして自在にチューニングできる柔軟さを備えた一台」といった感じですね。
チューニングスイッチによってもかなり印象が変わる製品ですが、ATMOSPHEREまたはPOPSに設定した時は、ベースはナチュラルな緩いUカーブ的なニュートラル感もありつつも、柔らかさを伴う中低音~低音と鮮やかさのある中高音を味わえる、気持ちの良いクリアなサウンドだと思いました。
聴覚上の音のバランスのグラフは以下の通りです。
※聴覚上のイメージで、計測データを元にしたものではありません。

音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
視聴環境
- Fiio M17(DC給電モード)
- 付属のイヤーピース
- 付属のケーブル
- チューニングスイッチ(POP/ATMOSPHERE)2種で試聴
※どちらも聴いた上での印象を以下に執筆します。
音色
「澄んで明るく伸びがあり、調整次第で自在に表情を変える音色」これが本製品の最大の特徴だと思います。
中高域は澄んだトーンで軽やかに伸びていき、全体に透明感のある空気をまとっています。一方で、中低域から低域にかけては、わずかにウォームなニュアンスが加わり、音に穏やかな厚みと温かみがあるようなTANCHJIMらしいチューニングが施されている感覚があります。
TANCHJIM ORGINでも似たようなニュアンスを感じた記憶がありますね。
低音域
ほんのりとした温かみを感じさせる仕上がりです。量感はチューニングスイッチにもよりますが、どのモードでも全体のバランスを崩さない範囲で心地よく支えてくれます。
また、抑制が効いた質の良い低音で、音楽の土台をしっかり支えながらも、自然な音のつながりを大切にしたチューニングだと感じました。
中音域
中音域は、輪郭がしっかりと立ちつつ、聴き心地の柔らかさも兼ね備えたチューニングが印象的です。ギターやピアノ、ストリングスといった中域を担う楽器が、くっきりと描かれながらも刺々しくならず、どこか落ち着いた丁寧さがあります。
高音域
繊細さはそこそこですが、伸びやか。それでいて角の取れた優しい質感。
金物系の響きやアコースティック楽器の高域成分もきちんと描かれつつ、耳に刺さるような刺激はほとんど感じません。どちらかというと余韻を持たせた音の抜けと透明感があり、清涼感があるような印象です。
解像度
最初に伝えたいのは、シングルダイナミックドライバーでありながら、この価格帯でここまでの解像度を実現しているのは驚きだということです。低域から高域までまんべんなく十分な解像度を持ち、1DD構成のイヤホンとしては値段を考慮すると、競合を抜いてかなり情報量が多く細部の描写も非常に丁寧で癖もありません。
音の輪郭が明瞭で、各楽器の定位や動きがすっと頭に入ってくる癖のなさ。音同士が重なってもさほど窮屈にならず、空間の中で自然に配置されている印象で出来が良い製品だと感じます。
ボーカル
音楽の温度を感じさせるような暖かさと芯があります。声や楽器が自然にすっと前に出てきて、そこに確かな存在感がありつつ、スッと丁寧に脳の中央より上に置くような。
歌い手の息の強弱や、感情の込もったフレーズがこちらの心に真っ直ぐ届いてくるような、そんな丁寧さがあります。表面だけでなく、声の奥にある熱や想いまで描いてくれるような…?
本項目は、少々好みっぽい表現に感じたので少々感情的な書き方でポジティブなバイアスがかかってます。
音場
ボーカル、楽器の奥行き感は並といったところではありますが、音場自体はやや広めで音の分離にも優れます。
ボーカルはやや近めに定位し、やや近めに楽器も定位しますね。
聞いてみた感想
実際にいくつものジャンルを聴いてみて、まず感じたのは、「想像以上に完成度が高い」ということでした。全体のバランスが非常に良く、どの帯域も無理なく鳴っていて、違和感なく音楽に浸れます。
ボーカルを軸にした楽曲はもちろん、楽器数の多いアレンジでも情報がきちんと整理されていて、細かなパートまでしっかり届いてくる印象です。それでいて、音が詰まりすぎたり、耳に刺さるような鋭さは感じられず、長時間でも疲れにくい優しい聴き心地が続きます。
強いて言えば、もう少し奥行き方向にボーカルと楽器のレイヤーが分離してくれると理想的ではありますが、この価格帯を考えれば十分すぎるクオリティだと思います。むしろ、それを気にさせないほど全体の仕上がりがまとまっていると感じました。
特に、高域の抜け感やわずかな艶っぽさは本機の個性として際立っていて、そこに魅力を感じる方は多いはず。低音を含む全体のバランスは、背面のチューニングスイッチやノズル交換で自分の好みに寄せていけるので、チューニングする楽しさも一緒に味わえるイヤホンだと思います(^o^)ノ
装着感について
ぱっと見は独特な形ではありますが、耳のポケットには不思議とスッと収まる小ぶりな筐体と滑らかなシェル形状のおかげで、とても快適です。

長所と短所
長所
- 価格以上に高解像度
- 癖ない音色
- 装着感の良さ
短所
- イヤーピースのサイズがS.M.Lのみ
- 音が良いが分離感を要求したくなる
- ノズル・スイッチの交換・変更が面倒

最近は本当に出来が良い製品が増えたな~って思う製品の一角に入るタイプの製品ですね。
まとめ
TANCHJIM FISSIONは、実際に使ってみてその完成度の高さに驚かされるイヤホンでした。音のバランスや解像度の高さはもちろん、チューニングスイッチや交換ノズルで音の表情を変えられる自由度、使い心地の良さ、どれをとっても丁寧に作り込まれているのが伝わってきますね
価格を考えれば、これだけの機能性と音質を詰め込んでいるのはかなりの実力派かと。1DDの枠に収まらない情報量や、聴き心地の良さも印象に残りました


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