今回ご紹介するのは、「LETSHUOER S08」です。
平面駆動型のイヤホンといえば、「速いけど低域は軽め」・「なんだか薄味」というイメージがありますし、実際そういう鳴り方をする機種は多かった…きがしますが、そんなイメージをサラッと覆す有線イヤホンです。

LETSHUOER様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
「LETSHUOER S08」は第4世代13mm平面駆動ドライバーを1基搭載した、有線イヤホンです。
LETSHUOERは2016年創業のブランドで、もともとはユニバーサルIEMとカスタムIEMを手がけるOEM、ODM工場として中国国内で名前を上げてきたそうです。日本での知名度が一気に上がったのは、高性能な「平面駆動型イヤホン」を、圧倒的な低価格でいち早く市場に投入したこと。当時まだ珍しかった平面駆動を1万円台に持ち込んだこのモデルが評判を呼んで、以降しばらく続く平面駆動イヤホンのブームの入口に。
その後は上位機の「S15」や、マルチドライバー構成のミドル〜ハイグレード機も展開しています。
…そして、創業8周年の記念モデルとして送り出したのが、このS08です。型番の「08」も、フェイスプレートやパッケージのモチーフになっている数字の「8」も、そこから来ています。ドライバーを新規に開発し直した第4世代。シェルも従来の3Dプリント樹脂から、CNC加工のアルミ合金へと路線が変わっています。
日本では17,450円という価格設定。平面駆動機としては手を出しやすい部類です。国内ではVGP 2025も受賞しているので、名前を見かけたことのある方もいるかもしれません。

あまり言ったことないんですが、私個人的にLetshuoerの音作りや製品設計や歴史に結構感銘を受けていて…
珍しく熱量高めに語ってしまいました(笑)
仕様
| 構成 | 第4世代カスタム13mm平面駆動型ドライバー ×1基 |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 20Hz〜40kHz |
| コネクター | フラットタイプ 0.78mm 2Pin |
| 発売日 | 2024年7月12日(日本国内) |
| 価格 | ¥17,450 (税込) |
パッケージ
パッケージはシックな黒ベースの紙箱タイプのもの。S08という製品名にちなんで、パッケージの表面には数字の8を模したデザインが施されています。そのデザインの背景には、波紋のように黒い模様も入っていてシンプルすぎない上質さを感じさせるパッケージング仕上がっています。


箱を開けると、上段にイヤホン本体と円形のハードケースが登場。
1万円台の製品としては素っ気ないくらいシンプルですが、内箱の作りはしっかりしていて安っぽさはありませんでした。説明書などの書類にも「8」のあしらいが入って一貫しているのは、上手な気の使い方だと思います。


付属品


- イヤホン本体 ×1ペア
- イヤーピース 2種類 合計6ペア
- キャリングケース ×1
- ケーブル ×1
- 交換式プラグ3.5mm ×1
- 交換式プラグ4.4mm ×1
- その他、説明書など
イヤホン本体
本体はアルミ合金の削り出しで、フェイスプレートには「S」と「8」を重ねたような曲線が彫り込まれて美しい造形です。
手触りも見た目もマットな質感で落ち着いて見えます。派手さはないぶん飽きが来ません。指紋も付きにくいのは好印象ですね。


背面やサイドビューは以下のような感じ。


ケーブル
ケーブルは4芯の撚り線で、単結晶銅に銀メッキを施した線材が採用。被膜はブラウンに着色されているようです。
柔軟性も高く取り回しはかなり良好でした。歩いていてもタッチノイズはほとんど気になりません。


交換式プラグの為、以下の画像のように接続部があります。 押し込んでカバーを回すことで固定されます。


イヤーピース
イヤーピースはグレーの半透明タイプと、黒いタイプの2種類。黒いほうが軸も傘も柔らかく装着感が良い印象でした。


キャリングケース
ケースは円筒形のハードタイプでフタはネジ込み式。剛性は文句なしで中身が潰れる不安はまったくありません。ただ正直なところ、フタを回して開け閉めするのは、ジッパーのケースに慣れているとひと手間かも?


装着イメージ
装着してみると見た目の大きさから受ける印象よりも素直に収まります。ただ人によってはハウジングが横に大きいと感じる方はいるようです。私は問題ありませんでしたが個人差はどうしても出ると思います。


音質について
最初に結論から。
- 押し出しは控えめで穏やか
- 厚みのあるスッキリした音
- 滑らかな音作り
- 金属的にギラつかず柔らかく減衰
- 空間広く俯瞰的に音の位置を把握しやすい
- 無理に引き出さない自然な解像感
- レスポンスの速いサウンド
ひとことで言うと、平面駆動の歪みの少なさを保ちながら、ダイナミック型のようにドッシリした厚みある低域を鳴らしてくるイヤホン。平面駆動というと低域もスッキリと涼しげでカラッとした音を想像しがちですが、しっかりコクがあってウォーム傾向でパンチもあり、ボーカルにはしっとりとした温度感が乗る心地よさがあります。
周波数特性
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB )
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことを理解の上でご覧ください。
平均値


評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- Lotoo PAW GOLD TOUCH
- 付属イヤーピース 黒
全体的な音色や特徴など
「LETSHUOER S08」の音色を大まかに言うと、ニュートラルを基準に少しだけ暖色へ寄せて、低域を持ち上げた緩やかなU字型カーブを描くような音色だと思いました。中低域のあたりに特に温かみがあり、中高域にはほんの少しのアクセントあるような印象。聴感上は低域寄りのU字と捉えるのが近いと思いました。
平面駆動という構成だとイメージ上はもっとスッキリした低域な製品が多いのですが、低域が十分に沈んでコクやボディ感がある低域という印象。重低音が凄い!とまではいきませんが、なんだか手応えがある鳴り方です。平面駆動らしく音の立ち上がりは速いけど、でも穏やかにウォームにまとまるのが面白い音作りだと思いました。
音色の質感としてはしっとり&ウォーム。でも高域は急にシャープで繊細で砂のようにサラッとしている。そこは平面駆動らしさでもありますね(笑)
低音域
コクのあるような豊かな低音と十分な量感があります。やや多めで下支え感も十分。ベースラインを追いかけてグルーヴィーに乗るのも楽しい鳴り方ですね。厚みもあるのに中低域は割とボヤけずしっかりタイトに鳴る。でも太め。ニュートラルフラット寄りの製品に比べると明らかにブースト気味な低域ですが、過剰だったり破綻している印象はありません。上品にまとまっている印象です。アタックもメリハリもあるけど穏やかに柔軟性があるように思います。
中音域
癖のないスッキリした鳴り方。ちょっと低域の温かさに引っ張られている感じもあり、粒はやや太め・大きめな感じですが、丁寧で穏やかだなと思います。楽器類も押し出し控えめで落ち着いて鳴らす印象。
ただ、少々音が混み合う楽曲では、輪郭がにじみ溶け合う場面はあるように思います。とはいえ価格を考えれば十分検討しているかと思います。
ボーカル
ボーカルはやや落ち着きがあり熱量が控えめな感じはありますが、適度に一歩前に進む程度の主張感で自然に伴奏に溶け合う感じで鳴ります。女性ボーカルは高音方向に伸びやかさがあるので、スッキリと綺麗な描写もしてくれます。男性ボーカルはかなり温度感や体温を感じやすい鳴り方ですね。
昨今の製品に比べると少々おとなしめですが、しっとりした描写や主張が控えめな音を好む方にはとても合うと思います。
高音域
平面駆動の得意な帯域といえばココでしょう。高域の伸びは自然でシルキーに上品に綺麗になる印象。鋭さはなくサラッとした質感です。減衰もサラッとしているので、金属音が響くような音が苦手な方にも合うと思いますし長時間のリスニングにも耐えるのは好印象です。
…上流次第で結構高域の伸び方が変わる気がするので、上流もいろいろ試してみて欲しいですね。
音場・空間表現
音の穏やかさや温かさに対して、音場は横方向にしっかり広くとれていると思います。楽器同士にも十分な余白があり、分離感も感じられます。とはいえ先ほど申した通り、音が混雑すると途端に分離感が失われる傾向はありますが…これは本作の利点とのトレードオフということで。
定位については、全体的に非常に整列された空間表現だと思います。低域はやや近めの距離感ですが、それを除けば音像が整頓されているので、追いたい音粒が俯瞰的に見える感じがあります。
解像度
穏やかな温かい鳴り方をする製品ですので、そのあたりの音作りも含め、解像度の高さを求める機種ではないとは思いますが、必要な音が自然に見えている状態を作るタイプだと思います。しっとりした楽曲を聞いた時の心地よさはかなりのものです。
1万円台としては十分すぎる水準だと思いますが、上位のS12系やS15と比べれば、音場の自然さや細かな描写では差があります。そこは価格差の分だけ、素直に開いている印象はあります。価格設定や性能面でも金額に非常に素直なので、予算で選んでも良いのがLetshouerの良い所ですね。
長所と短所
長所
- バランスの良い音作り
- 平面駆動とは思えない量感の低域
- 高域が刺さらず、長時間でも聴き疲れしにくい
- 歪みが少なく、音量を上げても音が荒れない
- 3.5mmと4.4mmの交換プラグが標準付属
- ビルドクオリティが高い
短所
- ややパワーが必要。駆動力のある環境が欲しい。
- 中域が混み合う曲では、やや濁りがち
- 高域のディテールに物足りなさあり。



低音域の課題は解決したけど、今度は高域のディテールがもっと欲しい!
総評と感想
「LETSHUOER S08」は、平面駆動というカテゴリに対する前提を書き換えにいく立ち位置も担っていたのではないでしょうか。
2026年の今となっては、そこまで平面駆動の弱点が意識されていないかもしれませんが、このドライバー方式に足りないと言われてきた要素を、味付けやイコライジングでごまかすのではなく、設計そのもので埋めにきているのが凄いと感じました。
しっとりウォームで温かい音色を求める方にとっては、価格に対する満足度は十分。上位機との差はもちろんありますが、それは上を知ってしまうと気になる程度の差です。予算が決まっている中での製品としてはかなりオススメです。
発売からしばらく経ってもロングセラー的に名前が挙がり続けているのは、そのあたりのバランス感覚が効いているからだと思います。
ただ、実力を引き出せるかどうかが使う側の環境に大きく左右される機種でもあるなぁと少々思ったりはしています。とはいえ、最近の低価格ドングルDAC等は高域が結構盛られているのでむしろ丁度良いのかもしれませんね。
このあたりの背景まで含めて選べるかどうかが、満足度の分かれ目になりそうです。ケーブル自体も結構ウォーム傾向な音だったように思いますし、裏を返せば、手持ちの機材やケーブルを差し替えながら育てていける余地が残っているということでもあるので、そういう遊び方が好きな方なら長く付き合えると思います。
今選んでも、十分すぎるくらい楽しんだり育てられる一本。ポータブルオーディオライフを過ごす上でLetshouer製品は一つは所有しておくと幸せになれると思います。音作りもとても勉強出来るブランドですから。
こんな人におすすめかも。
- 平面駆動の低域の物足りなさが気になっていた方
- 高域の刺さりが苦手な方
- 長時間のリスニングが前提の方
- イヤホンに高い予算を出したくない方
- 交換プラグ付きのケーブルが標準で欲しい方
購入先
筆者に質問コーナー
mondにて匿名の質問を受け付けております、興味があれば是非質問してみてください!










