今回ご紹介するのは、『Softears Volume S』です。
海外では2024年末の発売直後から評判が高く、300ドル前後のIEMを探すとかなりの確率で名前が出てくるモデルなので、いつかはレビューしてみたいなと思っていました。では早速レビューをしていきたいと思います。

AliExpress様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
Softears(ソフトイヤーズ)は、2017年に中国・深センで設立されたイヤホンブランドです。5BA構成の「RSV」や10BA構成の「RS10」、BA型の「Studio 4」などを展開しています。
『Softears Volume S』は、2022年発売の「Volume」(1DD+2BA)の後継モデルにあたります。
フェイスプレート中央には、チューニング切り替え用のスイッチがあります。内部に2系統のクロスオーバー回路を持ち、付属ツールでスイッチを回すと低インピーダンスモード(9.8Ω)と高インピーダンスモード(31.2Ω)を切り替えられます。スイッチには日本のコパル製部品が使われています。
ハウジングは医療用樹脂の3Dプリント製で、フレームは5軸CNCで削り出したアルミ合金、フェイスプレートには鍛造カーボンを組み合わせています。フレーム縁のスリット状ベントで内圧を逃がす構造です。
| 構成 | 2DD+2BA 10mmダイナミック+6mmパッシブダイナミック+BA×2 |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 8Hz〜40kHz(-5dB) |
| インピーダンス | 高インピーダンスモード:31.2Ω @1kHz 低インピーダンスモード:9.8Ω @1kHz |
| 感度 | 高インピーダンスモード:114dB/Vrms @1kHz 低インピーダンスモード:124dB/Vrms @1kHz |
| 発売日 | 2024年12月29日 |
| 価格 | 319ドル |
パッケージ
黒地のパッケージには、強弱記号やト音記号などの音楽記号が少し飛び出て光沢インク…?でびっしり敷き詰められています。ハウジングの輪郭を銀の線でなぞったおしゃれなデザインです。

開封すると、上にはイヤホン、下にはアクセサリーなどが詰めてありました。

内容物
内容物は…イヤホン本体、ケーブル(3.5mmプラグ装着済み)、4.4mmプラグ、イヤーピース2種(各S/M/L)、収納ケース、メッシュポーチ、調整ツール2本、クリーニングクロス、取扱説明書、シリアルカード、モード切り替えの説明カードが入っていました。

イヤホン本体
フェイスプレートは銀色のフレームにカーボンのプレートをはめ込んだようなものでした。中央の溝付きのネジがモード切り替えスイッチで、インピーダンスを変えることで音の出方を変えられるようになっています。

ハウジングの耳側は黒の樹脂で特にグロス加工などをしていないのでサラサラ。ノズルは先端に返しのないストレート形状で、開口部には音導管の穴が3つ並んでいます。

少しでも油分が付着するとハウジングが黒光りするのが結構気になります。こまめに拭き上げが必要かもしれませんね。
ケーブル
ケーブルは黒の布編みで、耳掛け部分は黒いスリーブで耳の形状が付けてありました。かっこいい(笑)
軽めで取り回しは良いですが、タッチノイズは布編みなので物理的な構造上、少し気になるところ。

イヤーピース
イヤーピースは2種類。左が「入耳式耳机套 eartips」と書かれた黒系のシリコン、右が透明のU.C.イヤーピースです。どちらもS/M/Lの3サイズ入りでした。


ケース
ケースはレザー調のセミハードケース。隣のメッシュポーチは巾着式で、イヤホンをポーチに入れてからケースに収められるので、2重に保護できます。

調整ツール
モード切り替えの説明カードと調整ツール。低インピーダンスモードは反時計回り、高インピーダンスモードは時計回りに、止まるところまで回します。

インピーダンスの違いによって以下のように音の傾向が変化しました。
高インピーダンスモードは低音が控えめになるように思います。それに加え音量が取りにくくなります。

装着イメージ
イヤホン本体のサイズ感は標準~やや大きめという印象。それより実際の装着感で気になるのはノズルの長さ。かなり長い…。
ハウジングを耳に密着させようとすると、ノズルがグイグイと穴に入るので、イヤーピースの形状やサイズはいろいろ試したくなります。

音質について
「Softears Volume S」ってどんなイヤホン?
- ほぼニュートラルで、ほんのりウォーム
- モニター寄りのキビキビした鳴り方
- 低音はキレと輪郭で聴かせるタイプ
- ボーカルと楽器が同じレイヤーで鳴る
- 高音はなめらかで、ややドライ
- 音場は標準的~やや狭めで、音像は近い
モニターとリスニングの中間に立ちつつ、少しモニター側に寄った音だなぁと感じました。ボリュームのある低音や、高音のきらめき・広い音場を求める人には物足りなさがあるかも。
とはいえ、非常に情報量も多くバランスも良く、どんなジャンルでも難無くこなすような基礎性能があり、海外で高い評価を得ている理由も頷けます。モニター要素もあるような音を好む方におすすめです。
周波数特性
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB)
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことをご理解の上でご覧ください。
平均

左右

評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- Lotoo PAW GOLD TOUCH
- 付属イヤーピース(黒)
- 低インピーダンスモード
全体的な音色や特徴
癖の少ないほぼニュートラルでほんのりウォーム系の音。突出した様子がなく、ボーカルも楽器も同じ距離感の中に並ぶ印象です。低音と高音を盛ってボーカル帯が引っ込みがちなドンシャリ型とは鳴り方が違い、モニター&リスニングのちょうど中間…より少しモニターに寄った音色だと思います。
鳴り方はキビキビしていて、スピード感があります。温かみが乗っていてもボヤッとせず、音の立ち上がりが速いうえに余韻は短めにスパッと切れるので、響きで聴かせるタイプではなさそう。この締まった鳴り方はモニター系に近いものの、音のバランス自体はリスニングっぽい要素もあって、音楽を楽しみながら情報量もしっかり拾える中間的なイヤホンなのかなと感じました。
低音域
量感や膨らみ、厚みは控えめでキレや質感、輪郭の追いやすさで聴かせるタイプ。ボフッとした空気を含ませるような表現はしないタイプかなと思います。立ち上がりや収まりにスピード感があり、アタックやリズムを主体とした低音かなと思います。
お腹に響くような沈み込みを重視する人には物足りないかもしれません。
中音域
中域は少し厚みがありつつ、楽器の輪郭が出る帯域もほんのり前に出ています。厚みはあってもクッキリしていて、エレキギターのカッティングやピアノの打鍵はアタックがしっかり立ち、音の質感まで素直。実直な感じがありますね。
生楽器の音色は少々淡白な印象はありつつも、ボディや弦の鳴り・響きがそのままストレートに届く感じです。音数の多いバンドサウンドでも各パートが埋もれにくく、クリアでレスポンスの良い中域だと感じました。
ボーカル
歌声は少し近めの位置から聴こえ、厚みと艶があって聴き取りやすく感じました。ボーカル中心に聴く人にも向きそうです。ただ、楽器もほぼ同じレイヤーで鳴っているので、声だけがぐっと前に出るタイプとは少し違うのかも?
男性ボーカルにはほどよく太い響きが乗っています。女性ボーカルは伸びやかで、音量をあげても耳に刺さりにくいですね。音数の多い曲でも声の芯がしっかり残り、伴奏に埋もれないのは良いところかなと思います。
少し気になったのは、女性ボーカルの線がやや細めに感じたこと。個人的には男性ボーカルの表現のほうが好みでした。
高音域
なめらかで、耳に刺さる成分が少なめの高域です。「キンキン」と耳につく部分もあまり出てきません。鳴り方はストレートで明瞭感が高いものの、きらめきや空気感は足りないように思いました。サッパリしすぎているのかな? 高音が空間にもっと響いていくような旨味が欲しいですね。
情報量そのものは多く、小さな音や残響も拾えるのですが、どこかドライな印象がありました。
音場・空間表現
楽器の定位や分離は、価格を考えれば十分に満足できる出来でした。各パートの位置がつかみやすく、ちょっとモニターっぽいニュアンスもありますしね(笑)
音場は、厳しめに言うと少し物足りないかも…?という印象です。とはいえ、標準的な範囲には収まっているかなと。奥行きや余韻、音の広がりが控えめなので、そう感じたのかもしれません。そのぶん音像はやや近めで、小さめのライブハウスの前方で聴いているような距離感。そんな表現がしっくりきました。
ダイナミクス
メリハリはたっぷりでアタックもしっかり。キックやスネアの弾ける感じもよく伝わりますし、テンポの速い楽曲やロック、メタルでもダルさを感じません。静かな時は静かに。動くべき時はしっかり動く、その落差が十分あります。
長所と短所
長所
- 2種類のチューニングを1台で切り替えられる
- 癖が少なくジャンルを選びにくい音作り
- テンポの速い曲でも遅れない反応の良さ
- モニター&リスニングの中間
短所
- ノズルが長すぎない?
- 付属ケーブルは布編みでタッチノイズが出やすい
- 高インピーダンスモードは…個人的には不要
- 高音はきらめきや空気感が少なく、ややドライ
総評と感想
『Softears Volume S』は、海外では300ドル前後のハイブリッドIEMの定番候補として、発売から2年近く経った今でもおすすめに名前が挙がり続けているモデルです。ただ、日本ではそこまで高く評価されている様子が見つけられず、私自身も聴いてみて、飛び抜けたプレミアム感まではあまり感じませんでした。
それでも、モニターライクで解像度の高いイヤホンを300ドル前後で探すなら、最初に名前を挙げたいくらい総合力の高いイヤホンだと思います。アナログっぽい有機的な表現が得意なタイプではなく、ゆったり音楽に浸りたい用途にはあまり向かないかなと思うので、まずはどんな音を求めているかを整理してみてください。そのうえで、高精細でモニター寄りのサウンドが好みなら検討する価値ありなイヤホンですね。
空間の広さは国内外ともに評価が真っ二つに分かれているようですが、解像度や作りの良さといった基礎性能への評価はほとんどブレがないので、安心して手に取れるモデルかなと思います。
こんな人におすすめかも。
- 解像度重視の方
- モニター寄りのサウンドを好む方
- 付属品含めて作りの良いものが欲しい方
基本的には上記の3つのどれかに当てはまるようなら検討する価値ありだと思います。
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