すずらんの後継機、という肩書きを聞いた瞬間に、ちょっとワクワクした気持ちで試聴をしたら想像以上に後継機として相応しい音色に仕上がっていると思いました。
ということで今回ご紹介するのは、「ダルマオーディオ TSUBAKI-VC」です。
前作すずらんの美しさをそのまま受け継いだ純白のシェルに花とVCのロゴを左右非対称であしらった、どこか日本的な佇まいのイヤホン、早速レビューを進めていきます。

ダルマオーディオ様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
DARUMA AUDIO(ダルマオーディオ)は、『深センダルマオーディオテクノロジ株式会社』の日本代理店『NTS株式会社』が展開するイヤホンブランドです。Vento Conductorシリーズをはじめ、ASMR向けの「カモミール」や声優とのコラボモデルなど、日本市場を主眼に置いた製品展開を行っています。
「TSUBAKI-VC」は、2024年発売の「すずらん」の後継にあたるモデルで1基のドライバーユニットと付属ケーブルを刷新し、チューニングを見直すことで音場の広がりと解像度を高めたとされています。
シェルはレジン素材で、透明度の高い乳白色のフェイスプレートにパールのような干渉色が浮かぶ仕上がり。右耳側には花、左耳側には「VC」のロゴマークが配置され、左右で異なる意匠になっています。
接続まわりは0.78mm 2Pin。4.4mmが標準装備なのが珍しいですね。
発売は2026年7月18日、公式オンラインストアからのスタートでした。販売価格は税込13,750円です。
| 構成 | 1DD |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 20Hz – 20kHz |
| 発売日 | 2026年7月18日 |
| 価格 | 税込13,750円 |
パッケージ
外箱はブラックにゴールドの縁取りという、高級感のあるトーンの化粧箱です。中央のDARUMA AUDIOロゴがしっかり主張しているのが気持ち良いパッケージですね。

スライドさせて開ける引き出し式の構造。化粧箱自体の作りが良いので、このギミックさえも上質です。この開け方って、それだけで少し儀式的な気分になるので個人的に好きだったり。

付属品

- イヤホン本体 ×1
- イヤーピース 2種類 合計6ペア
- 付属ケーブル ×1
- その他、説明書など
イヤホン本体
乳白色のハウジングをベースにフェイスプレートは光の角度で青やピンクに揺らぐパールのような干渉色が浮かびます。右耳には花、左耳には円の中にVCを組み合わせたロゴ。どちらも銀メッキ的な線画で、主張しすぎない繊細さが良いバランス。

内側は装飾のない乳白色ですが、ノズルはマットゴールドのメタルパーツで、メッシュフィルターもゴールドという凝った仕様です。ノズル径は標準的。2Pinのコネクタ部は凹凸のない埋め込み型で、横にベントホールが確認できます。

ケーブル
付属ケーブルは銀メッキOFCをベースにした同軸構造のもの。プラグは4.4mmバランスが標準で、少し張りがありますが、絡まりにくさは悪くない良いケーブルだと思います。

イヤーピース
イヤーピースは赤軸タイプと乳白色のクリアタイプの2種類。赤軸は軸が硬め。クリアタイプは傘が柔らかく装着感に違いがあります。せっかく2種類入っているので、どちらも試して好みを決めるのがおすすめです。

装着イメージ
筐体は小ぶりで、耳への収まりはかなり良いですね。男性の方ならば少し耳甲介腔が余りそう。
軽さもあって長時間でも負担を感じにくいです

音質について
最初に結論から。
- 明瞭度重視のW型ドンシャリ
- 低域はタイトで主張控えめ、モニター的な精度で下支えする鳴り方
- ボーカルはクリアでシャープ
- 高域は明るく硬質でスカッと抜ける
- 空間は縦にやや広めで左右も適度で満足度高
- とにかく鳴らしやすい!
全体としては、レスポンスの速さと明瞭度を武器にした、元気でハリのあるドンシャリという性格です。ドンシャリと言っても中音域が痩せるタイプではなく、ボーカルもしっかり聴こえてくるところがこのイヤホンの一番の強み。
甘さや情緒をたっぷり乗せて浸らせるような音ではありません。しっとりした温度感や、極めて繊細な微小音の描写を求める方には物足りなく感じられると思いますが、シンセの効いたハイテンポな楽曲を小気味よく鳴らしたい方、スマホ直挿しや小型DAPでも音量を稼ぎたい方、そして白く清楚な見た目に惹かれた方には、素直に刺さる一本だと思います。
新時代の良いドンシャリ機という印象です。
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB )
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことを理解の上でご覧ください。
平均

左右差

評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- lotoo PAW GOLD TOUCH
- シリコンイヤーピース(半透明)
全体的な音色や特徴など
「TSUBAKI-VC」を聴いた瞬間の第一印象は、所謂W型のドンシャリ系の方向性。リッチな中低音と、抑えの効いた丁寧でややダークな雰囲気がある音色でした。落ち着きがあって上品にまとめつつパンチ・メリハリも強め。ポップスを破綻させずにノリよく聴かせてくれるタイプだと思いました。
一瞬で分かるくらい、ボーカルが全く引っ込まないW型のドンシャリ系ハイレスポンスサウンドです。スカッと抜けが良く、前作にあたる「すずらん」と比べると低音に温かみが加わって、クールな薄めの音色から音の粒に密度感が加わってボディ感のある鳴り方になっており、大幅に進化していると感じました。
重心は真ん中くらいでどこかに振れることなく、バランス良く鳴っている印象です。鳴りの傾向としてはレスポンスが速くやや固め。それでいて下支えはタイトなのに硬すぎず、弾力を残した先ほど言ったよう低域はやや暖色寄りの質感ですね。
私が普段使っているイヤホンと比べて、びっくりするくらい鳴らしやすいのも良いところですね…!出力ボリュームが低くても大音量が取れる上に、ダイナミックドライバーが入力信号にしっかり反応しているような軽やかさがあります。
比較的どんなジャンルでも小気味よく鳴らせる、元気でハリのある音色でした。中音域から中高音が非常に明瞭な部分もあって、エレクトロ・ポップな楽曲、つまりシンセ系の音が入ったノリの良いハイテンポな楽曲との相性が良く感じられます。ポップスからロックまで全然OKですね。
クラシック・オーケストラやジャズなどのまったりした楽曲も繊細に鳴らしてくれますが、やや低音が固めに感じられる場面もあって、相性はありそうです。音量をしっかり上げると荘厳な響きも味わえると思います。
低音域
質感はレスポンス良くタイトで、引き締まったバランスを重視したような鳴り方で昨今の製品としてはやや抑えめ。おかげで低音が前に主張してくることはありません。反応も良くぱっと立ち上がり、ボヨンボヨンせずにビシッと引き締まった質感の低音という感じ。
必要なときにはズンと深く鳴らしますが、普段は自然な下支えに徹しているように思います。主張するような癖がないので、楽曲に順応して量感が増減するような感覚がありました。
輪郭は線がくっきりしていて、硬めの弾力感。無機質にはならない程度の柔軟性とほのかな温かみを残しているのが良いところです。
距離感は良好で、低音が楽曲全体によく馴染みつつ、定位は胸のあたりで上質に響きます。中域への被りは一切心配無用でしょう。まるでモニターイヤホンのような、低域の量感と精密さを感じさせる鳴り方でした。
中音域
1DDらしく、低域から中域にかけて滑らかに繋がります。多少の引っ込み、純粋に音量が全体の中では低めという感じはありますが、質感は良好。しっかりDDが鳴ってるようなストレートな音色です。
ピアノや弦楽器、管楽器などはそこまでディテールに富むわけでもありませんが、正直不満も何もない、やや軽やかな響きを伴う鳴り方で、響きにはどこかアナログっぽい生っぽい響きも感じられます。ギターやサックスなど、中高音あたりまで上がってくると、シャープで明瞭な音色になっていくのも特徴かもしれません。
楽器同士のレイヤーごとの描写は想像以上に上手でで、帯域としてはやや抑え気味ながら、ボーカルの後ろで丁寧にレイヤー感や分離感を感じさせながら鳴ってくれるのが良いところだと思います。
ボーカル
クリアでシャープ、多少ドライな印象はありますが、軽やかでクリアかつシャープなボーカル表現だと思いました。
微妙にサッパリした印象はあるものの、少し温度感がほのかに感じられるので、無機質なほどではないなぁと思います。女性ボーカルもブレス周りの細かなディテールにシャープネスがありますが、どちらかというと個人的には男性ボーカルの質感の方が好みでした。
ボーカルは楽曲や伴奏の具合によって前傾する曲も、後退する曲もあるので、前後関係についてはなんとも評価しづらいところです。ただ、一貫して透明度やシャープネスは高く、クリアで明瞭度の高いボーカルであることはブレないと思います。
甘さや温度感、情緒や感情を強く乗せるようなボーカルとは、反対の性質や質感なので、ボーカル表現は明確に好みが出るかもしれません。
高音域
超高域付近になると自然にロールオフしていて、よく伸びるというほどではありませんが、抜けよく素直に伸びている高音域だと感じる質感です。
やや明るめで、軽やかにスカッと硬質に鳴ります。粒立ちも良く、シンバルやハイハットもシャープで、リズムが取りやすいですね。
余韻は消え際までは伸びませんが、その一歩手前までは自然に伸びつつ鳴ってくれます。1DDが自然に引き出した高域、という印象でした。誇張のない解像度感も好印象です。鳴らし込みを進めていくと、なんとなく余韻やアナログ感が徐々に増していくような感覚もありましたので、是非お試しください。
音場・空間表現
空間は結構頑張っているというか、1万円台としては十分に広いと思います。左右に音が振られるステレオ感も十分で、やや縦方向にも広さがありました。
空間全体としては、ボーカルの頭をセンターに捉えてからそこを起点に広がっていく形です。前方への展開は強くありません。ボーカルもしっかりセンターに定位し、そこからじんわりと広がるような感じですね。完全な球形の空間ではなく、わずかに縦に長い紡錘型の空間表現でした。 奥行きは標準的で価格相応で特筆するほどの奥行きはありません。
ホールの響きや残響感は強くはないものの、淡白にならない程度にはアナログ的な響は感じられます。。中音域から高域にかけての響きやリバーブの乗り方は素直で、ピアノソロやボーカルのソロなどは気持ちよく抜けて、強くはないもののホール感のある良い響きが乗ります。多少、楽曲や帯域による得意不得意はあるのかもしれませんね。
解像度
1万円台の1DDイヤホンとして納得の平均的な解像度で、解像度そのものが強く秀でているタイプではありません。ただ、ドンシャリ系に攻めた音色ながら聴き応えやボディ感のある質感にしたり、解像感の演出が強すぎることもなかったりと、出てくる音の完成度を高めてきたのかなと思います。
情報量の音の粒の単位はやや大きめで、極めて繊細な音を追求したタイプでもありませんが、今の時代のドンシャリとして完成度を高めてきた解像度十分なイヤホンという感じでしょうか。
ダイナミクス
パンチやメリハリもあって、パワフルな鳴り方をしてくれます。ただ、繊細で静かな表現が得意な方ではないので、強弱そのものの大小の差が強いわけではなく、普通かなという印象でした。
その代わり、駆動のしやすさは褒め称えたいところです。出力に余裕のない環境でも本来の元気さがそのまま出てくるので、機器を選ばずに楽しめるのは良いですね~。
長所
- ボーカルが引っ込まないW型ドンシャリで、明瞭度が高い
- 低域がタイトかつ精密で、中域への被りがない
- 高域の粒立ちが良く、リズムが取りやすい
- 小さな出力でも十分な音量と反応が得られる
- 4.4mmバランスケーブルが標準付属
短所
- 甘さや情緒・感情や乗りづらい
- 超高域の消え際の余韻があと一歩物足りない
- 低音がやや固め
- マイクロディテールは値段なり
総評と感想
「TSUBAKI-VC」は、前作すずらんの外観の美意識を受け継ぎながら、音の方向性については順当に完成度を上げてきたモデルだと感じました。
この製品の価値は、1万円台前半という価格の中で「聴きどころが分かりやすいW型のドンシャリ」という個性を作り切ったところにあると思います。何でもそつなくこなす優等生を目指すのではなく、レスポンスの速さと明瞭度という武器をはっきり立てて、そのうえで前作を踏襲しつつ温かみを乘せてただのドンシャリにならないよう、完成度をしっかり上げたのは好感が持てます。
加えて、駆動しやすさと4.4mmバランス標準という組み合わせは、これから環境を整えていく方にもオススメですし、逆に環境が揃ったけど明確にドンシャリ系に振り切ったサウンドのイヤホン持ってない方が、遊び心で手を出しても失敗しづらいのもポイント。どちらにも受け入れやすいのはある意味では親切さだと思いました。
万人に勧められる無難な一本というよりは、ドンシャリ系だと狙いを理解して選ぶと満足度が高くなるタイプだと思います。
美しい見た目に惹かれて手に取った方が、音を出した瞬間に良い意味で裏切られる。そういう出会い方も似合うイヤホンだと思います(笑) 本当に完成度高いドンシャリ系です。
こんな人におすすめかも。
- シンセの効いたハイテンポな楽曲を小気味よく聴きたい方
- ドンシャリでもボーカルはしっかり聴きたい方
- 低音は主張せず、下支えに徹してほしい方
- スマホや小型DACなど、出力に余裕のない環境で使いたい方
明瞭度とレスポンスの速さを軸にした音作りなので、テンポの良い楽曲を気持ちよく鳴らしたい方には素直に刺さると思います。逆に、じっくり浸れる情緒的な音や、微小音まで拾い上げる繊細さを求める方は、別の方向性を探した方が満足度は高いかも~。
レビューは以上となります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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