今回ご紹介するのは、「LETSHUOER DX1」です。
各社が本気で殴り合っている激戦区、そこにLETSHUOERが2年かけて自社開発したドライバーを1基だけ積んで投げ込んできたのが、今回の「DX1」ということで、どんな音なのか、レビューしていきます。

LETSHUOER様より、ご紹介のために製品をご提供頂きましたが、内容は当サイトの下記のレビューポリシーに基づく筆者自身の体験と個人的な見解のみで構成しています。
製品について
「LETSHUOER DX1」は、11mmシングルダイナミックドライバー搭載のカナル型イヤホンです。ドライバーは自社開発で、アルミニウム・マグネシウム合金の振動板にダイヤモンドパターンのトポロジー構造を持たせたもの。振動の周波数と振幅をコントロールして歪みを抑える狙いがあり、この構造は中国で特許を取得しているようです。
もうひとつの要素が、ステムノズル部に内蔵された5kHz付近のノッチフィルターです。5kHz付近の不要なエネルギーや共振を軽減することで、歪みを抑え、音のディテールや純度、正確性を一層高めます。その結果、よりスムーズでクリア、そしてバランスの取れたサウンドを実現しています。
| 構成 | 1DD (11mm アルミニウム・マグネシウム合金製ダイナミックドライバー × 1) |
|---|---|
| 再生周波数帯域 | 20Hz〜40kHz |
| 発売日 | 2025年4月25日 |
| 価格 | 23,000円(税込) |
パッケージ
イヤホン本体の外観を意識した金銀色の装飾のパッケージ。

開封してみると、金属製のケースや、白いトレイに収まったイヤホンや説明書などが出てきます。

付属品
付属品を全部並べるとこんな感じです。ケースは開けると乾燥剤が1つ入っていて、深さもそれなりにあるのでケーブルを巻いて本体ごと放り込める余裕があったりします。

- イヤホン本体 ×1
- イヤーピース 3種類 合計9ペア
- 付属ケーブル ×1
- キャリングケース ×1
- その他、説明書など
イヤホン本体
フェイスプレートを正面から。六角ボルトの頭のようなデザイン。面取りされた多角形のゴールドリングが縁を囲むような感じ。

シェル全体が電解メッキ仕上げのステンレス。フォルムはノズル側に向かって自然に絞り込まれている形状をしています。
指紋は当然つきますが、拭けば綺麗サッパリ落ちるツルツルの表面でちょっと安心感もあります。
ノズル先端のメッシュフィルターは少し飛び出す形で装着されているので強く押し込まないように注意したい所ですね。

ケーブル
銀メッキ単結晶銅が採用。白い編組の被覆で、見た目の質感はかなり良いです。透明な樹脂パーツやステンレスのスプリッターの組み合わせで結構作り込まれたケーブルという印象です。適度な柔らかさもコシもあり、使用に苦労しない標準的な取り回しです。
L/R表記がコネクタの透明なハウジングに刻印されているものの光を当てないと見えづらいです。(窪みにインクを流したくなります(笑))

イヤーピース
イヤーピースは個性が全て異なるものが3種類付属します。画像中央のものは、「TRIの角笛」というイヤーピースではないでしょうか。

装着イメージ
耳の後ろに素直に沿ってくれる形状のケーブルで、さらに細身のケーブルなので、本体の重量感に対して引っ張られる感覚が少なく、装着感が見た目以上に良かったですね。ただ、カスタムIEMライクのシェイプをしているわけではないので、イヤーピースと耳掛け部分の2点で支える形にはなります。

音質について
最初に結論から。
- ニュートラル寄りで、中音域だけ厚みと温かみがある
- 音の実体感があり、フラット&ニュートラル系にありがちな薄さが出ない
- ボーカルは自然な距離で、表情が細かく見え
- 生楽器の質感が良く、金属的なクセを感じない
- 低域は量より質。張り出してこない
- 高域は刺さらない。きらめきより聴きやすさ重視
- 音場は横に広め、奥行きと高さは標準的
- 鳴らしやすいが、環境やケーブルで伸びしろあり
派手さや刺激で殴ってくるタイプではなく、素直さと質感で聴かせるイヤホンです。全体のバランスはニュートラル方向にまとめつつ、中音域に実体感を持たせることで、正確なのに退屈しないという難しいところでよくまとまり着地しています。その分、低音の量感で気持ちよくなりたい人や、きらびやかで華やかな高域が好きな人には物足りない部分は多少ありそうですが、個性の違いと理解しておくと良いと思います!
向いているのは、大人しめの音が好みで、ボーカルや生楽器を質感重視で丁寧に聴きたい人。刺さりや聴き疲れが苦手で、長時間つけっぱなしにするような聴き方をする人にも合うと思います。
周波数特性
実測データは以下の通りです。
(IEC711/IEC 60318-4 clone / 1/12oct (1kHz) @ 94dB )
※8kHz付近は計測器の特性上共振しやすい帯域で、実際よりもピークが強めに出やすいことを理解の上でご覧ください。
平均

左右差

評価チャート
音の傾向や特徴は、以下の評価チャートをご覧ください。
※製品の価格を考慮した評価となります。
試聴環境
- Lotoo PAW 6000
- lotoo PAW GOLD TOUCH
- イヤーピース(TRI 角笛)
全体的な音色や特徴など
ニュートラル&フラットバランスですが痩せて聴こえない、どこかコクや実体感があるような自然な鳴り方が特徴だと思います。この手のタイプのイヤホンは、正確さや自然さと引き換えに音が薄っぺらくなったり、味気ない鳴り方になることが多いように思いますが、密度感や厚みがしっかり感じられるタイプのイヤホンなので、ネガティブな印象がありません。
ここまで言えば予測は付くとは思いますが、低域も高域も張り出しのない落ち着いた鳴り方で派手さはありませんが、中音域の密度感や温かみのようなものが自然に感じられ、ボーカルの温度感や生楽器のディテールがよく立ち上がっている印象です。耳あたりも良く、本作に搭載されている5kHzのノッチフィルターも効いているのかもしれませんね!
同社の製品をいくつか聴いたことがありますが、やはりブランドの音作りの方向性はCadenza 4やCadenza 12、Mystic8などに共通しているように感じました。ドライバーは1基しかないのに、鳴り方の落ち着き方が上位機っぽいというか、ちゃんと「LETSHUOERの音」だなぁとしみじみ思います。
低音域
よく落ち着いた鳴り方で、量で押すタイプでも控えめでもないちょうど良いバランス。サブベースは軽めに沈み、必要に応じて唸るような対応力のある低音です。ややレスポンスは遅めなゆったりした低音ですが、元々量感に誇張が無いのでボヤけや遅延している印象は全然ありません。(制御うまいなぁ)
ミッドベースには芯もあり、必要に応じて軽やかにキックも鳴ります。ソースの要求によく順応し、ニュートラルな味付を維持しています。昨今の製品に比べると多少物足りなさはあるのかもしれませんが、ちょっと長めに聴いているとすぐ耳が慣れますし、長時間聴ける耳の疲れない量感なのも良い所でしょう。
重みが足りないと思ったらリケーブルを試してみても良いかと思います。
中音域
「LETSHUOER DX1」の音の中心になっていそうな帯域は恐らくココ。めっちゃ実体感強め。
薄っぺらくならず芯があり、密度感のある落ち着いた音が出ます。ギターもピアノもアコースティック系の弦楽器も、質感が生々しく出てきます。
金属振動板らしい硬さや不要な響きが出そうなものですが、そういう素材由来のクセを全く感じないのは驚きましたね。
音粒のディテールや重さがちゃんと乗るけど膨らみすぎて籠ったりしないのは流石のLetshuoerブランドという印象。
いろいろ両立させるのが上手だなぁと思います。強いて言うなら、中高音のパンチや煌めき、金属音のアタックはや鮮烈さは控えめで色気っぽさも大人しい。中音域にフォーカスした明るく明瞭なW字傾向のイヤホンと並べると、エネルギッシュさや輝きでは負けます。ただ、これは「淡白」とは違っていて、適度な色彩と滑らかさがちゃんとあるうえでの落ち着きなので、聴き込むほど良さが分かるタイプ。ポタオデ歴が長い人ほどしみじみと良さがわかるのではないでしょうか。
ボーカル
男女どちらのボーカルも、自然な距離で伴奏の真ん中にボーカリストが立ちます。前に出過ぎず、引っ込みもしない。この「ちょうどいい位置」の作り方がかなり上手いですね。
声の実体感は特に良くて、輪郭がしっかりしているのに硬くならず、わずかに温かみが乗ります。ブレスや歌い出しの立ち上がり、フレーズの切れ際といった細かい表情まで生々しく拾ってくれるので、バラードやアコースティック系は特に感情・情緒や甘さなどがよく乗ります。
歯擦音はまったく気にならないと思います。そして音量も上げやすいのも注目したい所かなと思います。
高音域
低音から中音域と繋がってきた所の延長の性質でよくまとまっています。十分な伸びと透明度、わずかな硬質さやシャープさがあり、自然な空気感を与えてくれます。しかしここに誇張は一切なし。
その分金属音の伸びや響きはやや短めで大人しく良くも悪くもまとまっていますので、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。超高域のエアー感や微細なニュアンスを積極的に聴かせにくるタイプでもないので、聴き疲れの無さを重視したのでしょう。
音場・空間表現
音場は横方向にやや広めに取られている気がします。奥行きや上下には標準的で、正面に整った丁寧な空間表現という印象です。
定位は極めて自然で、楽器の位置や距離感が取られやすい設計だと思いました。
解像度
解像感自体は、2万円台の1DDとして高めの水準にあります。ボーカル域と演奏の分離も適切で、音が濁る場面はほとんどありませんでした。ドライバーのポテンシャル自体はまだ上がありそうで、駆動力のある環境やリケーブルを持ってくると空間表現が立体的になってくるので、いろいろ追い込んでみたいですね。
個人的には銅線のケーブルがオススメかも。
ダイナミクス
音量変化への追従は素直です。小音量から大音量まで、ボーカルの明瞭度と厚みが崩れずに保たれるのが良いところでした。静かなパートで痩せず、盛り上がりで滲まない。
ドライバーの反応そのものも良く、比較的鳴らしやすくドングルDAC程度でも十分に本領を発揮してくれますが、駆動力に余裕のある環境を用意すると解像感と空間の見通しがもう一段上がるので、ポテンシャルは結構隠れているような。
長所と短所
長所
- 中音域の厚みと明瞭さを高い次元で両立している
- ボーカルが自然な距離に定位し、細かい表情まで拾ってくれる
- 刺さりや歯擦音がほぼなく、長時間でも聴き疲れしにくい
- 金属ベースのケースやイヤーピース3種など、付属品が充実している
- 鳴らしやすく、ドングルDACでも十分に本領を発揮する
短所
- 低域の量感は控えめで、低音好きには物足りない
- 高域のきらめきや余韻の伸びは抑えめで、華やかさに欠ける
- 音数が増えると定位が曖昧になり、分離も一段落ちる

大人しくニュートラルに聴きたい大人のイヤホン。LETSHUOERらしさが全開してる。
総評と感想
「LETSHUOER DX1」は、自社開発した11mmドライバーの素性の良さとブランドのサウンドシグネチャーに全振りしたイヤホンだと思いました。ドライバーが1基を活かし、素直さで勝負してくる。この作り方が明確に効いていて、ニュートラル方向のバランスなのに聴いていて退屈しないという、なかなか難しいところで見事に着地しています。
中音域付近を始めとし自然な距離感と、厚みがあるのに滲まない輪郭。5kHzのノッチフィルターで耳当たりの角がきれいに取られているので、音量を上げやすく、そのまま何時間でも流していられます。生楽器の質感の出方も良く、ジャンルを選ばずに面倒を見てくれるタイプだなぁと思います。
低域の量感と高域のきらめきは意識的に抑えられているように思いますが、ここを「物足りない」と取るか「余計なことをしていない」と取るかで、この製品の評価は割れると思います。私は後者に近い立場ですが、ドンシャリ的な快感を求めて2万円を出す人には向かないという事実は、はっきり書いておくべきところですね。しかし、バランスの良いニュートラルな音色を求めるなら満足度の高いものだと間違いなく感じます。
マルチドライバーの物量で殴る流れが続いているなかで、ドライバー1基とその周辺設計だけでここまで持ってきた。「LETSHUOER DX1」はそういう真面目さが素直に音に出ている製品で満足度高かったです。
こんな人におすすめかも。
- ボーカルや生楽器を、質感重視で丁寧に聴きたい人
- フラット寄りが好きだけど、音が薄くなるのは避けたい人
- 刺さりや聴き疲れが苦手で、長時間つけっぱなしにする人
- 金属シェルの質感や見た目の所有感を大事にしたい人
低域も高域も強く張り出さない設計なので、ドンシャリの刺激的な音を求めると物足りません。しかしニュートラルベースなイヤホンだからこそ味わえる繊細なディテールもあったり、長い時間聴いていても疲れず心地良いのも強み。何を求めるかでしっかり選ぶといいですね!Letshuoerブランドらしいニュートラルバランスな仕上がりが好みなら、是非購入してみてください。
レビューは以上となります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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